俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、分霊体

 

 一度作り上げておきながら必要なくなった、あるいは興味がなくなったからと投げ捨てるのは俺のポリシーに反する。最後まで付き合うことこそしないにしても、俺が離れても問題なく回るようにするくらいのことはしておかなければならないだろう。それが責任と言うものだ。

 まあ、実際には神にそういった責任は一切存在しない。神に責任があることは、それこそその神が司ることに関してのみだ。それ以上は問えないし、問うたとしても意味はない。それこそ自己満足程度の事であり、自己満足のために動くのが神の基本的な在り方だ。

 要するに俺もよく居る神と変わらないと言うことだが、わざわざ変えたいとも思わないし変えなければいけないと言うわけでもない。それこそ『そうしなければいけない理由はない』。

 

 だがまあ、俺は人間にかなり寄ってる神だからな。後の事も多少は考えるさ。

 さて、問題はどんな形で残すかと言う事だが、ここで新しい神格を作ることはしたくない。せっかく壊した某神話がもう一度作られてしまう可能性があるからな。あれはちょっとしたホラーが混じってさえいれば簡単に混ぜ込めてしまうからできるだけここで神格は作りたくない。

 ならどうするかと言えば、神格が作れないなら巫女でも作ればいいって話になる。神官でもいいが、残念なことに俺の神官は処女でなければいけないって決まりがあるらしい。実際にはそんなことは無いし、普通に産めよ増やせよ地に増えよ、ただし限度はあるから守れよ? って感じなんだが、まあその辺りを気にしつつ権力が集中しすぎないように気を付けながら色々と教え込んでいくことにする。知識は大事な物だからな。誰もが知っていなくとも、誰かが知ってさえいれば狭い範囲の組織なら十分だし、そうした知識はしっかりと継承していけば小さな集落程度なら問題なく続けていくことができる。所謂物知り婆さんとかそう言う存在になるわけだな。

 ちゃんと知識の継承さえできていればいいんだが、こういうのは中々難しい物だからな。正確に物事を伝えていくには、やはり文字が必要だ。一般で使われなくとも、必要な所で使われてさえいればそれでいい。

 しかし、それを一体どうやって伝えていくか。今この場で突然に文字を与えると言うのもおかしな話だし、そもそも覚えられるかどうかも怪しい。覚えられなくはないだろうが、しっかりと記憶にとどめておけるかどうか。そこが一番の問題だ。

 

 で。考え付いたのが俺の分霊を何かに憑依させておいて行くことだ。(ヘスティア)の象徴と言えば竈の炎なんだが、今の俺はヘスティアではなく灰のテスカトリポカ。テスカトリポカの象徴と言えば、間違いなくこれだろう。

 そう、鏡だ。それもただの鏡ではない。テスカトリポカの名が示す通り、煙を吐く鏡、黒曜石を磨き上げた物であるべきだ。実際にはテスカトリポカ……赤や青ではなく、黒のテスカトリポカには、それ以外にも多くの二つ名があったりするが、まあ気にすることは無い。ついでに気にする意味もない。気にしようが気にしまいが、結局現実にやることに変わりはないんだからな。

 

 さて、できるだけ大きな黒曜石を一枚鏡にするように磨き上げなければ。中々大変そうだが、仕方あるまい。

 


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