竈の女神、外出する
だが俺はそんなことは気にせず弟妹達を腹の中から引っ張り出す。早く出してやらないと出口が閉じるかもしれんからな。閉じきるまではまだもう少しかかるだろうが、余裕を持って行動することは大切だ。
「……え……あー……え?」
「んー……久し振り、でいいのかね。見覚えはあるんだが……レアー、だよな?」
「そうだけど……え、何もしかして貴女ヘラ!?」
「おうどこ見て俺をヘラだと認識した言ってみろ」
「身長だけど」
「ティターン神族のあんたから見ればそりゃチビだろうよ。俺はヘスティアだ。ヘラはこっちでこっちがデメテル。この可愛い方の弟がハデスでこっちのえらいエロい方の愚弟がポセイドンだよ」
そう言いつつひょいひょいと
「ここが、外の世界……」
デメテルがキョロキョロと周囲を見渡す。
「……あー、えー、と……ハデスです。お久し振りです」
「あらあらまあまあ、可愛く育っちゃって……過程が見れなかったのが残念ね」
ハデスはレアーに向けて挨拶。レアーは一瞬だけ少し寂しげな表情を浮かべるが、すぐに取り繕って見せた。普通に考えて自分の子供に今みたいな他人行儀な反応をされると傷つくんじゃなかろうか。そうなるとアテナ辺りに嫌われていただろうゼウスは結構なショックを受けていそうな気もするが、自業自得だと言うことで諦めてもらおう。
そしてポセイドンは―――
「姉貴ィ!仕掛け終わりやしたァ!」
「そうか、よくやった。今夜の飯はカレーにしてやろう」
「Yahoooooooooooo!!!」
カレーで釣って一仕事してきてもらった。基本さえ理解していればちょいと調合するだけで簡単に美味い味が出せるカレーは実にいい料理だな。肉が無くともある程度までなら野菜でコクは出せるし、野菜カレーを一日置いておくとこれがまた美味い。確かギリシャ神話で言う黄金時代……
要するに、俺のこの料理はまだ存在すらしていない料理と言うことだな。ついでに無数のスパイスには薬膳的な効果を持つものもあるから、量を間違えなければ身体にもいい。神は別に食わなくとも死ぬことは無いんだが、美味い食べ物は心を豊かにしてくれる。食育と言う言葉もあるくらいだし、間違っちゃいないだろう。
さて、それはそれとして―――以前俺がした約束を果たさなければならない。誰との約束かって?
―――俺自身さ。
雰囲気がそれっぽくなるからと言う理由で作った外見だけのハリボテ核発射スイッチのカバーを開けて、押し込む。すると俺達が出てきた肉の山の一部が吹き飛んで、同時に凄まじい絶叫が響き渡った。
スイッチを押すと同時に暴走させたのは、持ち運びできる程度の大きさの太陽炉。それをポセイドンに頼んで
……あ、いた。アフロディテ。本当に
目標は達成した。