俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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神話の時代
竈の女神、外出する


 

 クロノス(クソオヤジ)の腹を必殺技でぶち抜いて出てきた俺達が初めに見たのは、俺たちの母となる存在、レアーだった。突然クロノス(クソオヤジ)の腹を突き破って見知らぬ奴が何人も飛び出してきたら普通驚く。俺だって驚く。

 だが俺はそんなことは気にせず弟妹達を腹の中から引っ張り出す。早く出してやらないと出口が閉じるかもしれんからな。閉じきるまではまだもう少しかかるだろうが、余裕を持って行動することは大切だ。

 

「……え……あー……え?」

「んー……久し振り、でいいのかね。見覚えはあるんだが……レアー、だよな?」

「そうだけど……え、何もしかして貴女ヘラ!?」

「おうどこ見て俺をヘラだと認識した言ってみろ」

「身長だけど」

「ティターン神族のあんたから見ればそりゃチビだろうよ。俺はヘスティアだ。ヘラはこっちでこっちがデメテル。この可愛い方の弟がハデスでこっちのえらいエロい方の愚弟がポセイドンだよ」

 

 そう言いつつひょいひょいとクロノス(クソオヤジ)の腹に空いた穴から弟妹達を引っ張り出して見せれば、レアーはその目をキラキラ輝かせながら喜んだ。まあ、もう会えないかもしれないと思っていた愛し子(自分で言うのもあれだが、ギリシャ神話の母親と言うのは子供にたいしての愛情が非常に強いのが多いためこう言う表現になる)が突然現れて元気そうにしていればそりゃ喜ぶのが母親ってものなんだろう。俺もわからなくはない。

 

「ここが、外の世界……」

 

 デメテルがキョロキョロと周囲を見渡す。クロノス(クソオヤジ)の腹の中には存在しなかった植物や風、そして鳥などの動物達を見ては驚いている。ヘラもデメテルと同じように辺りを見渡しているが、こちらはデメテルに比べて緊張感があるように思える。ヘラが慎重なのかデメテルがおおらかなのか……どちらもか。

 

「……あー、えー、と……ハデスです。お久し振りです」

「あらあらまあまあ、可愛く育っちゃって……過程が見れなかったのが残念ね」

 

 ハデスはレアーに向けて挨拶。レアーは一瞬だけ少し寂しげな表情を浮かべるが、すぐに取り繕って見せた。普通に考えて自分の子供に今みたいな他人行儀な反応をされると傷つくんじゃなかろうか。そうなるとアテナ辺りに嫌われていただろうゼウスは結構なショックを受けていそうな気もするが、自業自得だと言うことで諦めてもらおう。

 そしてポセイドンは―――

 

「姉貴ィ!仕掛け終わりやしたァ!」

「そうか、よくやった。今夜の飯はカレーにしてやろう」

「Yahoooooooooooo!!!」

 

 カレーで釣って一仕事してきてもらった。基本さえ理解していればちょいと調合するだけで簡単に美味い味が出せるカレーは実にいい料理だな。肉が無くともある程度までなら野菜でコクは出せるし、野菜カレーを一日置いておくとこれがまた美味い。確かギリシャ神話で言う黄金時代……クロノス(クソオヤジ)が統治していた時代にはまだカレーは存在していなかったし、それどころか人間に耕作と言う概念が無かったはずだ。行うのはもっぱら狩りで、山の幸を取ったり獣を狩ったりして暮らしていたはずだ。

 要するに、俺のこの料理はまだ存在すらしていない料理と言うことだな。ついでに無数のスパイスには薬膳的な効果を持つものもあるから、量を間違えなければ身体にもいい。神は別に食わなくとも死ぬことは無いんだが、美味い食べ物は心を豊かにしてくれる。食育と言う言葉もあるくらいだし、間違っちゃいないだろう。

 

 さて、それはそれとして―――以前俺がした約束を果たさなければならない。誰との約束かって?

 

 ―――俺自身さ。

 

 雰囲気がそれっぽくなるからと言う理由で作った外見だけのハリボテ核発射スイッチのカバーを開けて、押し込む。すると俺達が出てきた肉の山の一部が吹き飛んで、同時に凄まじい絶叫が響き渡った。

 スイッチを押すと同時に暴走させたのは、持ち運びできる程度の大きさの太陽炉。それをポセイドンに頼んでクロノス(クソオヤジ)のケツに叩き込ませた上で暴走させれば、当然ながらクロノス(クソオヤジ)の股間は消し飛ぶわけだ。

 ……あ、いた。アフロディテ。本当にクロノス(クソオヤジ)のナニについてた泡から産まれたんだな。どんな産まれ方だよと思ったが、人間でも人間の腋から産まれたような奴がいるって伝説があるんだしおかしくは無い……はずだ。知らん。

 

 目標は達成した。クロノス(クソオヤジ)は殺せないがどてっぱらに風穴を開けてやったし、ケツに太陽炉を入れて爆破するのもやったし、去勢もした。ちなみに吹き飛んだタマには精力がたっぷり籠ってるだろうし集めて畑の肥料。クロノス(クソオヤジ)は最後まで俺の役に立ってくれるいい奴だよ。残念ながら殺せないがな。

 


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