俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、焼き払う

 

 呑まれてから……どれくらいの時間が経ったのかは俺も知らないしわからない。ただ、眠くなったら寝て、そして目が覚めたら神の力や魔法らしきものの力の源泉に色々とアプローチを加えていた。身体はすっかり成長したが……なんと言うか感覚的にはかなり短い間に一気に成長した上に前世の身長とかなり違い、ついでに胸に以前は無かったものがついていたり股の間にあったはずのものが無かったりで非常に奇妙な感覚だ。慣れるために身体を動かしてみたが、地面が無いのに崩拳が打てるくらいの勁をどこから持ってきてるんだろうな? あれは確か地面から持ってきてたはずなんだが。

 

 まあ、そんなことはどうでもいいんだ。重要なことじゃない。重要なことは他にある。

 まず、俺の属性だ。父は大地と農耕の神であり、属性は土。母親もまた大地の神で、属性は土。どちらも土を属性として持つが、父は土以外にも農耕を司る。生物が生きるには五行の全ての属性が必要となるし、有る意味では父は全ての属性の片鱗を持っていると言うわけだ。

 では、ヘスティアとして産まれた俺はどうなのか。竈の女神と言うからには当然ながら火の属性が強いが、同時に土の属性も持っている。火を強くするためのふいごから風の適正もなくはない。竈が何で作られているかを考えれば土の属性を持っているのも納得できる話だし、ギリシャ神話においても一応火の女神としての側面も持っているのだから火の適性があるのは当然だ。

 さらに、孤児の守護神として闇を照らして見せるために光の属性も持ち、安らぎを与えるための闇もある。神の力は全ての代用になるが、神の力を考えない適正で考えればこんなものだろう。

 

 ───十分だ。十分すぎるほどだし、足りなけりゃまた新しい解釈で持ってくればいい。

 

 太陽を作る。まずは核からだ。太陽の核は水素と、それを核融合させて作るヘリウム。炉に付き物のふいごの要領で圧縮してやれば、水素とヘリウムの核融合炉、通称『太陽炉』の出来上がり。中身だけだがな。

 これの外側に闇を纏わせる。一切の吸熱を行わないように内側に光を反射するような仕掛けを作り、無駄な排熱を行わないようにする。調整が難しかったができたので問題ない。できなかったら暴発するが、ある程度離れたところで作ったから被害はない。少し前ならともかく、今ならそもそも暴発させないしな。お陰で闇属性と光属性が強くなってナイト的に最強に見えるようになってしまった。

 そして闇のなかで太陽を作り上げた後は、その反応速度を加速させて熱量を溜め込む。最終的に超新星爆発を起こさせて、その熱量とエネルギー、そして融合されてできあがったヘリウムガスを核にまた太陽を作り上げる。ヘリウムは更に核融合を起こし、原始配列表においては一つ下に位置するネオンへ。合計の質量がほんの僅かに減るが、減った分の質量は純粋なエネルギーとして存在しているため世界の法則に違反している訳ではない。

 神としての力である程度無視できるが、当然ながらできるだけ違反しない方が疲れないため出来る限り法則にしたがって行動する。

 そうしている間に余裕が出てきたのでもう一つ水素を圧縮して核融合炉を作る。質量をエネルギーに変えている都合上、徐々に質量が失われていくので少しずつ追加していくわけだ。

 初めは水素。そこからヘリウムとなり、ネオンへ。一つ一つの分子は重くなり、結合できなかったものは崩壊してエネルギーに。最終的には全ての質量をエネルギーへと変え、それらを纏めて解放する。一点に纏めることができれば今でもクソオヤジ(クロノス)の腹をぶち抜くことくらいできるかもしれないが、まだ調整が難しい。俺が死なないようにするためにも指向性をつけるのは必要不可欠だし、やることは多い。

 竈の調整。追加する元素の生成と選別、そして圧縮。温度管理に強度と圧力の兼ね合いに放射線などのことも考えなければいけない。やることもできることもまだまだ尽きそうにない。

 よし、とりあえず今出せる限界まで竈を増やして───

 

 ピシッ!

 

 ……あ。

 

 




 
 焼き払われるのがクロノスだとは言ってない

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