俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、フラグ折り

 

 神話を破棄するためには、大きな力が必要となる。それこそ、神話全てを跡形もなく破壊するのだから、最低限物理的にその神話を知る者もその神話を伝える物も消し去ることができる程度のエネルギーは必要となる。

 幸運なことに、俺が作ってしまったかもしれない神話は未だ誰にも知られることの無いままであるため、概念的にも非常に脆く、そもそも神格の形成されていない状態なので概念を補強する存在もない。この状態ならば、恐らく問題なく破壊することはできるはずだ。

 

 問題があるとすれば、やるのが(ヘスティア)ではなく(ベル)だと言うことだな。要するに、人間の体で神話を一つ破壊し尽くす出力が出せるかって事だ。

 いや、出すだけなら出せないことはない。ただ、出した結果この身体が崩壊する可能性が高いのが問題で、それを何とかするために現地に協力者───信者を作っているのだ。

 信者から贈られる信仰をヘスティアではなく俺が外部装置に溜め込み、そして必要量が溜まったら全てを使って神話を砕く。そう言う策な訳だが……アメリカが成立するまでおよそ千年。さて、間に合うかどうか。

 そも、俺は神話として作り上げたわけではなく、神話から一部を抜粋した形で遊星を作り上げ、剣を打った。ただそれだけの繋がりから神話全てが実現するにはそれなりに時間がかかる。間に合うとは思うし間に合わなかったら最終手段も取るつもりだが、まあ間に合うはずだ。

 神話生物も居なければ邪神もいない。旧支配者さえも居ないのならば、ただ神話を破壊するだけで済む。旧支配者が出てくる前に、そして外なる神が現れるよりも早く、存在しているかどうかも怪しい神話を崩壊させなければならない。

 と言うか、そもそも俺は神物語で神話を作り出した覚えは無いんだよな。もしかしたら現れている可能性が無きにしも非ずって程度で、それでももしも本当に現れていた時の被害があまりに大きすぎるから準備だけはしておくことにしたと言うだけで。

 結果的にアメリカ合衆国が成立するかどうか怪しくなったし、ネイティブ・アメリカンと呼ばれることが無くなるかもしれない彼らに農耕技術と文字が与えられてしまったし、俺の知っている未来とはかけ離れてしまいそうだ。第二次どころか第一次の世界大戦すら起きるかどうか……ああ、いや、起きていたな、第一次は。様々な神話が繋がり始めたせいで、神々の住む場所、天界などと呼ばれる場所も一つになり始めている。その領地争いが神々の間で起きていたはずだ。

 ちなみに俺は速攻でインド神話のガルダをカレーで手懐けて本能に任せて暴れまわってもらいつつ自分は身を隠したから被害はない。他の多くの場所は被害でまくったらしいが、喧嘩を売ってきた相手のことまで考えてやれるほど俺は強くは無いからな。上手くはあるかもしれないが、それも力任せで貫かれる可能性がある程度の物だ。俺は確かに武神ではあるが、俺以外にも武神や戦神は多くいる。破壊神なんて奴らほど厄介ではないが……いや、どっちもどっちか。単一の戦闘能力が高いか、最終的に目的を果たすことを優先するかって違いだからな。厄介さではそう変わらない。

 

 ……最近、創造神としての権能で作れるものが増えた。以前から別の権能で代用できていた物だが、何と運命その物を作れるようになったのだ。

 要するに、絶対にありえないはずの未来の可能性を作り上げ、予言の権能によって強固にしてやれば、ありえない未来を実現させることができるようになると言う事だ。

 と言ってもそこまで無茶が効くのは俺の世界の中だけだ。普段から過ごしているここではそこまでの能力は流石に出せない。他の神も多いし、運命の神や未来を見通す神ってのは結構どこの神話にもいる物だからな。そいつらの権能に邪魔されてはそうそううまくいく物じゃない。

 逆に言えば、それさえ無ければいくらでも使えると言う事なんだが。

 


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