森ができて、畑ができて、湖ができて、ここで過ごす者達は農耕民族となった。と言っても農耕だけで過ごすわけではない。確かに農作業はするが、狩りもするし魚も取る。俺が作った湖には魚はいなかったんだが、水草が豊富に存在し、溢れだした水が川として別の川に流入したとこらから逆に入ってきた様々な小魚などが少しずつ新たな生態系を作り上げている。
今はまだ人間が食べるような大きさの魚は少ないが、この調子で増えていくならば恐らく十年程度で豊かな湖となるだろう。今でも植生だけならば十分に豊かと言えるものがあるのだが、残念ながら植物以外があまりにも少ない。なお、植物プランクトンは植物に含めるものとする。
後、森に蜂を住まわせ始めた。これによって受粉が行われるようになり、より植生も豊かになっていくことだろう。雀蜂? あれはいない。俺の主観で言えばあれは害獣だからな。うちの蜜蜂は雀蜂よりいくらか強いが、居るよりいない方が良い。はっきり言って邪魔だ。積極的に獣を殺しに行くし、植物の受粉を助けることもしない。発展させていかなければいけない時だと邪魔以外の何物でもない。
で、森と言えばちょうどいいところに森の賢人と謳われるドルイドさんがいらっしゃるではありませんかこれはなんという偶然。運命的ですらあるな。
「なぁにが運命だよあほらしい」
「安心しろ、俺もそう思いながら戯れに言ってみただけだ」
運命か。運命だったらある程度大きな流れだけなら予言の権能を貰った時から読めてしまっているから、あれだ、どんな本でも読む前から粗筋がなんとなく読めてしまっているような感じであまり心の底から楽しむと言う事ができなかったりする。それに、俺の前では確率とかあまり役に立たないからな。必要なら俺が求めた未来を持ってこれるし、時々必要でなくとも勝手に持ってこられる事すらある。まったく、なんて厄介な権能だよ。
とは言っても、そういった権能を普段から利用している俺がどうこう言えるような事じゃないんだがな。
「だが、森についてはお前が一番だと言うのは間違いないだろう? 俺に任せると森が変な方向に進化して内側の空間が歪んで変な所に繋がったり、スカイ島への直通経路ができたり、ギンヌンガの淵より深い渓谷ができる可能性すらあるしな」
「なんだそりゃ、おっそろしいねぇ」
「冗談じゃないってのが一番恐ろしいところだよな」
俺の言葉に一瞬顔をひきつらせたが、それでもある程度はこちらの意をくんで動いてくれるあたりなんともありがたい。一部は冗談だと思っているようだが、残念ながらそう言う確率がほんの僅かではあるが存在するのは間違いなく事実だし、そしてほんの少しでもあれば引っ張ってこれるのが俺だ。俺についてきた当時の自分の判断を恨むんだな。