俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、大仕事

 

 この時代、荒野と言うのは中々に過酷な場所だ。そもそも生物が少なく、水も無く、生命活動を続けていくだけでも苦労する。そんな場所だ。

 まあ、神秘の残る世界においては荒野よりも遥かに生きるのに苦労する場所も普通にあるが。

 例えば高山。多くの山が仙郷や天界等に繋がっているが、そのせいもあって山の環境と言うのは非常に過酷であることが多い。

 物理的にはあり得ないほどに広く感じるのは、仙郷等から漏れ出る魔力によって異界化し、空間が広げられているためであったり、そんな魔力に触れて育った動植物は様々な変異を起こしていることもある。だからこそ山籠りによる修行が効果的だとも言われているんだが。

 荒野と言えば西部劇を思い浮かべるかもしれないが、別に北アメリカ大陸西部でなくとも荒野はある。荒野には微生物があまりいないため畑には向かないんだが、逆に言えば微生物がいれば畑にすることも不可能ではないというわけだ。

 ただ、微生物がいない場所には微生物がいなくなるだけの確固とした理由が存在する。水がないことや、異様に暑いこと、放射能に汚染されていることなど、理由は多岐にわたるがどれも生きていくには過酷であるということが理由になっている事に変わりはない。

 では、どうすればこの近くに畑などを作ることができるのか。それはとても簡単だ。水を持ってくればいい。だが、俺は水の権能は持っていない。どうするかと言えば、無いなら持ってくればいいだけの事だ。権能が無くとも物理事象ならどうとでもなる。

 まずは周辺の調査。そして必要な所に必要な物を用意して、周辺状態の改造。精霊を扱う魔術のようなものがこの大陸には広がっているし、ついでにそう言った精霊への信仰は紀元前の3000年頃にはあったとも言われているのだ。確証は無いようだが、それでもかまわん。重要なことは、今この時代のこの場所において精霊の力を借りる魔術がかなり広く認知されて使われていると言う事だ。

 そして俺、と言うか『灰のテスカトリポカ』は、この時代のこの場所で初めて語られるようになった神格だ。この土地において神格とは精霊とそう変わらない存在であり、多くの集落で精霊を崇める祭りなどを行っている以上何もしないでもそれなりの力を得ることはできるようになる。特に太陽の神であり、祭儀の神である俺はそうした祭によって得ることができる信仰が非常に多く、太陽神として存在している以上は太陽を崇められれば俺にも信仰が入ってくる。自然信仰ってのはある意味超原始的な偶像崇拝だからな。人間が作った物ではないものを信仰するか、それとも人間が作った物を象徴として信仰するかの違い程度しか無い。俺からすれば小さな差だ。

 

 そうして手に入れた信仰の力で、水を持って来る。この場所では雨はそうそう降ることは無いが、代わりに地下深くまで掘れば水が出てくる。水が出てくるところを狙って集落を作ったのだから当然だが、こうなると本当に水に関わる権能が欲しくなってくる。ギリシャだと水に関わる権能は殆どポセイドンが抑えているし、抑えていない一部も雨やら外海やらと言った物ばかり。こっそりと雪の権能は貰っておいたが、ギリシャって雪降らねえから持ってるだけ無駄に近いんだよな。使える雨はゼウスが抑えてるし。

 だが、高山近くなら大雪を降らせてから溶かすことで湧水を用意することができる。四季のある地域ならば冬に雨季を持って来ることで雪を降らせてそれを溜め込み、夏に水にすることもできる。

 まあ、本当に最終手段になるがルーンで水を用意できるからあまり困らないし、五行を使って増幅すれば火と金属と水と植物と土があればほぼ無制限に出せたりもする。植物の代わりに同じ木属性の雷、電気でもいけなくはないし、空気も一応属性は木。水が少しでもあれば増幅に増幅を重ねてなんとかなるな。

 

 


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