俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、教え込む

 

 なんだろうな。俺はどうすればいい? こいつらの面に思いっきり拳を叩き込みたいんだが、許されるだろうか。

 食料が足りないと言っているくせに、食えるものを見つけようとも食えないものを食えるようにしようともしない。余裕がない以上は美味くしようと言う意思が無いのは仕方がないかもしれないが、だからと言って余裕を作ろうとしていないというのは非常に腹立たしい。

 余裕がないなら作れ。作ることもできないなら持ってこい。その努力を怠るようなやつに未来は無いぞ。

 

「そう言う訳だ馬鹿共。お前らが捨てていた物は上手くやれば食える。しかも栄養価も高い。動物は基本的に捨てるところがないんだと理解しろ。あとガウェイン。次具材を全部問答無用にマッシュしたらお前の全身を同じようにしてやる」

『はい!』

 

 まあ、この辺りは素直で助かる。最悪千里眼に似た物で黒歴史をつつきにつついて心を一度ぺきっとへし折る必要があるかもしれないと思っていたが、やらずに済んでよかった。ランスロットはアーサー王の妻であるギネヴィア妃との浮気問題についてをつつけば行けただろうし、トリスタンは『人は天秤に付いていくことはない』という言葉に対してアーサー王がどれだけ自分を捨てざるを得なかったかという話やそれをさせた実に無能な騎士についてをつついてやったり、まあいくらでもつつける場所はある。なにしろここ、場所は離れていてもケルトだからな。しかも中途半端にキリスト教の混じった。

 要するに、精神攻撃が殆ど効かない脳筋の国に精神的な脆さを加えた奴等の集まりだと言うことだ。本場のケルトと比べれば相手をするに非常に容易い。一部においては効果的すぎてやばいが。

 ちなみに完成品をこいつらに食わせてあるから、どうにか再現しようと必死になってくれている。材料はいくらでもあるとはいえ、失敗作は全て食わせるようにしている。ブリテンの状況のせいでやばい失敗しても普通に食べてしまう辺りもう貧乏と貧困がみんな悪いよな。

 飢餓での死は病死の領域にギリギリ入る。正確には豊穣の権能を持つデメテルの本領なんだが、食っても吸収できない病気による飢餓なら俺の守備範囲だからな。そこまで詳しくやると面倒なんだが、できなくはない。ブリテンの飢餓は普通に食うものがないから起きる飢餓だが、ほんの少しでも被っていれば拡大解釈でなんとかできるのが権能やら何やらといった概念系の技術だ。

 あと、調理技術を一から教え込んだモードレッドが一番始めにまともなカレーを作れるようになった。ご褒美に女に戻したんだが、顔がアーサー王と殆ど同じと言うことで一瞬荒れそうになったが、王位よりカレーのお代わりが欲しいとマジな顔でモードレッドが言ったお蔭で空気がもうぐっだぐだになってしまった。本来の歴史のことを考えるとあれなんだが、平和な方がいいと言うことで流すことにした。平和が一番だからな。

 

 ちなみに許された理由の一つに短命で放っておいてもすぐ死ぬと言うのがあったんだが、残念だが俺のカレーを食べた時点で不老不死は確定している。ネクタルの上位互換だからな。仕方無いな。

 それに、一度カレーを食べたせいか食文化の目覚めが凄いことになっている。ガウェインは菜食主義者らしく野菜たっぷりのカレーを作ろうとしているし、アグラヴェインはスパイスの刺激で脳が活性化した事からひたすら辛さを求めたカレーを作ろうとしている。刺激臭が凄かったので敬遠されているが、まああれなら食べられないことは無いだろう。俺は願い下げだが。

 さあ、これでブリテンはマズメシの国とは言われなくなるな。よかったよかった。これから未来がどうなっていくかはわからんが、飯が不味い国と言われるよりは飯が美味い国と言われた方が良いだろうよ。

 


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