俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、時間調整

 

 遊技場の状態を色々と弄ったが、地上にいる精霊や英雄達がかなり頑張ってくれているため人間たちはまだ追い詰められてはいない。

 精霊は刻まれてはいるものの最低限の効果しか発揮していない俺の恩恵を活性化させたり、時に自身で戦うことすらある。そして英雄達は、精霊に受けた加護によって俺の恩恵を活性化させ、モンスターに対抗する。そういった英雄と精霊の協力がなければ、もっと簡単に追い詰められていただろう。

 精霊からの加護による活性は、恩恵の常時顕在化とも言えるもの。鍛えれば鍛えるだけその場で強くなれるが、まあ色々と制限もある。スキルや魔法は発現しても二つまで。特殊アビリティも早々発現しないし、そもそもそういうのが発現したかどうかもわからない。そういったものがなければ素直に精霊の加護から神の恩恵に移ってくれないだろうから、仕方無い。

 亜人を含めた人類種が滅ばないように。しかし全ての人類に危機感を抱かせるように。そうした調整はかなり難しいが、しないとゲームが成り立たなくなってしまう。開始まではかなり余裕があるようだし、開始できそうな頃になったら時間を止めてから参加したいと言う神を呼び、降臨させると同時にダンジョンの穴に蓋をする。そして先行した神格にはいくつかの役割を与えると共に、世界ではなく社会の運営の一部を任せたりする予定だ。言ってみればゲームマスターの補佐をするサブマスターのようなものか。やっていることはゲームマスターと言うよりはゲームキーパーに近いが、権限的にはゲームマスターなんだよな。何しろ俺が作るわけだし。

 

 ……時間が来るまで何年かかるかはわからない。仕方がないし、何か適当な暇潰しでもしておこう。

 そうだな……この世界で起きた様々な英雄譚を纏めて本にしてみるか。原本は保存用観賞用布教用貸し出し用写本用と最低五つほど用意しておくとして、まずは俺の世界で産まれた神の過去を見るところから始めよう。

 文字の権能を持つ神である俺だが、残念なことに芸術や詩文の才能も権能もない。あくまで書くだけなら上手く出来るというだけだ。だからこそ、きっちりとあったことを正確に書き出す事ができる。

 当人にとっては知られたくないことがあるかもしれないが、それに関しては諦めてもらおう。どうせ中の奴等にも様々な形で語り継がれているんだろうしな。

 エルフ。ドワーフ。パルゥム。ワービースト。ヒューマン。アマゾネス。精霊。様々な種族から産まれた様々な英雄の話題だ。語り継がれない方がおかしい。

 ただ、種族贔屓等によって様々な場所が歪められているだろうが、それもまた伝説や神話にありがちなものだ。感情と言うものは色々と面倒なものだが、ある意味では感情こそが人となりを確定させるものなのかもしれない。ゼウスに感情がなかったら、もう少し人間のそっち系統の被害は少なくなっていただろうしな。

 ただし、本当にゼウスに感情が無かった場合、色事関係でなく命に関わる被害はむしろ増えていただろう。ギリシャの神の殆どは天災及び天変地異の生まれだからな。川の神でさえ洪水等を引き起こすことから奉られている。俺? 俺はほら、竈の女神で国家及び家庭と言った社会そのものの守護者だから、そんな天災相手に真正面からどうこうできるような力はない。真正面からでなければやりようはいくらでもあるが、技術面を考慮しない純粋なスペック勝負だと勝ち目がない。竈の女神だからな。虚弱貧弱処女神だからな。

 それをどうにかするために他の細々とした権能を片っ端から手にいれようとしてまさかまさかで太陽の権能とか手に入れてしまったりもしてな。今では立派な武闘派女神だ。俺の場合は襲われたり阿呆な事をされなければそうそう呪ったりしないからかなり穏健だがな。

 

 しかし、時間まで暇だ。完成するまでちょっと出掛けてみるか。

 


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