俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、教育する

 

 この世界で生まれた神を集めて情報を集める。まずは周知させることとして、俺がこの世界を作った存在であると言うことを知らせる。

 面白いのは、俺の作ったこちらの世界には地球との共通点はあっても繋がりはない筈なのだが、同じような名前の同じような存在があったりすることだ。

 例えば地形。地球と同じような地形と名前があったりするし、国の名前にもいくらかの共通項がある。その他にも、地球の神話に語られる集団や軍団がこちらの世界にも同じような名前で集団が作られていたりする。

 当然ながら共通しない物もあるが、驚く程度には多いのだ。

 

 さて、そんなわけで適当に集めた訳だが、やはりと言うかなんと言うか跳ねっ返りも多い。俺がこの世界を作り上げた存在だと名乗る前に攻撃してきたり攻撃準備を整える奴がそれなりの数存在していた。

 まあ、そういった奴はとりあえず全員叩き落としてしばらく動くこともできないようにしておいたが、その次にはひっそりと逃げようとする奴や暗殺しようとでもしているのか気配を消したまま俺の背中に回り込んでいる奴もいた。当然全員目の前に引っ張り出したが、流石はかなり弱いとは言っても神格だ。それなりの力は持っているようで、なかなか諦めない。こっちはまずは会話したいんだが、襲ってくるなら基本的に戦う質なので相手はしてやる。

 

 そして、頭の中身が強くなることで埋め尽くされている戦闘狂がやたらすっきりした顔で倒れ伏し、俺を憎々しげに睨み付ける奴はいてもしばらく騒がれることがなくなっただろうと判断した時点で俺は戦闘の気分を解いた。解いたところでいつでも戦闘に入れてこそ武術家なので弱体は精々リーチが縮む事くらいしかない。武器なしの方が強いってことはないが、まあ多対一だとか距離だとかで色々変わるから仕方ないわな。

 

「突然だが、お前達にはこの世界の運営の一部をやってもらおうと思う。嫌なら別に構わんぞ。既に肉体を失って精神的な存在になっている以上、ここで仕事をしなければ精神が磨りきれて消滅するだけのことだ。俺に仕える小神と言うことになるが、俺は基本的に表に出ることはないからお前達への信仰が薄れることは無いだろう」

「……質問があります」

 

 俺に問いかけるのは小人の女。その影に無数の騎士を宿らせる、騎士団を率いる女神……らしきもの。名前は確か……フィアナ、だったか?

 

「どうした? 答えるに値する問いなら答えてやるぞ」

「この世界の運営とはいったいどのようなものなのですか?」

「簡単に言えば歪みを直す仕事だな。世界は広がり続けているんだが、外の壁が一部薄くなったり分厚すぎたりすると歪んで膨らむから、それを直す必要が出てくる。ちなみに放置すると世界の寿命が縮むこともあるから気を付けろ? 俺は基本的に世界の外に住んでいるから関係無いが、内側に住む奴は世界の壁が砕けたらまず間違いなく死ぬぞ。なにしろ作った世界自体がかなり小さい世界だからな。外の世界と触れたら即効で砕け散る」 

 

 まあ、正確にはそうなるように作ったんだがな。世界が広がりすぎて他の世界を蝕むのは不味いだろうと思って、製作段階でそう作った。なかなか面倒だったが、力の制御を試すには十分だった。

 

 俺は軽く答えたが、どうやら連中にとってはかなり大きな出来事だったらしい。まあ、この世界で神として崇められるような存在の多くは誰かを守った逸話の持ち主ばかり。地球の反英雄のような逸話の持ち主はかなり少ないと言うか皆無と言って良いレベルだ。そんな奴等が『やってくれないと世界滅ぶかも?』と言われたらそりゃあやる気にもなるだろう。

 ……実のところ、よほど大きな事がなければ放置していても歪みは拡散されて消えていくんだが、その辺りは言わぬが花と言うやつだ。嘘は言っていないぞ? 本当の事を言っているわけではないというだけで。

 


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