聖杯戦争。俺が参加してしまった時には色々あって聖杯をカレーポットにしてしまったわけだが、そのカレーポットを使って召喚した英霊がなんか知り合いだらけだった。
飢餓はよくないので国家的に飢餓に満ちていた所に無限に食料を出すことのできる大釜をくれてやったら凄まじい勢いで信仰されるようになったブリテンの王、アルトリア・ペンドラゴン。
同じくブリテンの円卓の騎士、湖の騎士ランスロット。ちなみにだが、他の世界はどうだか知らないが俺のいた世界では飢餓による死は俺が司っているためどうするかは俺次第だったりする。流石に豊穣やら狩りの方までは……豊穣はともかく狩りの方は司っていないのでそっちはまた別の神の手助けが必要だったが、まあともかく餓えるのはよくない。救えてよかった。
問題は国家的に神秘とカレーの中毒症状が出てしまっていることだが、ブリテン島も神秘の濃い地域であり、かつ食料がカレー以外にあまり無い事からあまり問題はないと判断……していいのかどうかはまた別として、ともかくそういうことにしておいた。
それから初めての旅行先で国王をやっていた、ウルクの英雄王、ギルガメッシュ。加えて神格は召喚できない筈がなぜか召喚できてしまった日本神話の禍津神、洩矢神。そして寝ていたまま異世界に引っ張っていったのが『死んだ』と認識されたらしく座に登録されたメディア☆リリィ。そういった知り合いが大量に現れたのだ。後の二人は知らん。
で、そろそろ地脈からの魔力も貯まった。俺がこの場に降りてもいいだろう。神格は無いままだが
まあ、調停者と言っても俺は俺だ。未来では水着で拳を振るう調停者や旗で殴り付けてくる調停者が出てきたりするかもしれないが、俺の調停と言えばカレーくらいしかできん。この聖杯戦争ならそれでいいかもしれないが、普通はそんな調停者には意味がないだろうに。
まあどうでもいいな。何を言おうとやることは変わらん。俺は基本的にはカレーを作るのみ。殴ったり蹴ったりってのは得意じゃないんだ(苦手だとは言ってない)。
と言うことでカレーポット……じゃない、聖杯からさっさと出ていく事にする。初めの頃はそんなことはなかったんだが、最近はどうもカレーの臭いが染みついてきているような気がしてならない。カレー臭のする奴とかどこのコックだと言う話だ。
まあ、知り合いには喜びそうな奴もいるが、喜ばれてもなぁ。
……ん?
「……洩矢神か。久方振りか?」
「左様ですな。あなた様は全てを儂らに任せていなくなってしまいましたからな……ミシャクジ様」
「元々日本神話の神格ではない俺がいつまでも居たら問題だろう? だからこそ俺の後を継げるものとしてお前を作ったんだから」
「理解しております。……が、母に会えないのは寂しいと言う子の心も理解していただければ」
洩矢神はそう頭を下げるが、俺の場合親があれだから気持ちはよくわからん。母親であるレアーの方は俺たちを愛していたようだが、父親の方はなぁ……殺しこそしなかったが、愛されてるかと聞かれるとなぁ……。
まあそう言うことで俺には親子の情と言うものがよくわからないが、まあ本来ならいいものなのだろう。俺も一応いい親として、あるいは良い支配者として行動していた時期もあるから親としてならなんとかなるんだが、子供としては人間だった頃の遠い記憶しか残ってないからな。洩矢神の気持ちはよくわからん。
だが、何となく寂しくなるときがあると言うことは理解したのでたまには日本神話圏にも行く時間を取るとしよう。ある意味じゃあ俺の子供みたいなものだってのも間違いじゃないし、気にかけるくらいはしようかね。
「ではまず食事にするとしようか。何がいい?」
「ではカレーを」
「肉じゃがな、わかった」
俺は肉じゃがを作るために出せるものを出して……あん?
……反転が付与されている。俺はどうやらただのベルではなく、英霊となった後に性質を反転させられているらしい。
基礎が俺だからこそそう変わっていないようだが、今の俺は恐らく大分好色で理不尽だ。俺の元々の性質は神としての在り方を重視している時には秩序・善、俺と言う存在をそのまま出すと混沌・善といったところだが、何故か今の俺は混沌・中庸だ。ある意味一番厄介な状態とも言える。なにしろ一貫性があまり無い状態なのだから。急ぎの仕事の最中に迷いまくる上司とか害悪でしかないからな。マジで。
まあ、その辺りは自覚しとけば問題ない。とりあえず肉じゃが作るか。
調停者ベル、召喚。
洩矢神、謁見する。
ピキィーン!
「!? この気配……彼の大神の眷属か……!」
直感(カレー)により新たなサーヴァントの出現に気付いた直後に、信仰の加護(カレー)がその正体を看破する。
そう、かつて国を救ったカレーの神。無限に美味なるカレーの湧き出す大鍋を巫女へと持たせて送り出した、ヘスティア様。その濃厚な神秘の香り(カレー風)が漂い、冬木の町の大気を塗り替える。
冬木に住む人間達の本能を刺激し、暴走させかねないこの香り。誰もがこの香りの元を求めて町中を徘徊するようになるに違いない。
そうなる前に、彼の神の眷属へとご挨拶に行かねば!
騎士王、速度が三倍を越える。
湖の騎士、速度が三倍を越える。
英雄王、気付いた瞬間に瞬間移動していた。(本人どうやったか理解してない)
世界にカレーを広めよう。誰もがカレーを好きになるよう、カレーを世界に広めよう。
その夢は世界を蝕む。あらゆる食材がカレーによって駆逐され、あらゆる味はカレーより劣るものとされた。
始まりは美味を伝えたいと言う願いであり、幸福を分け合いたいと言う願望であり、戦いを終わらせたいと言う希望であった。
その願いは人類から選択肢を奪い、文化を蹂躙し、やがてカレーを食せぬものを世界から駆逐し、やがてカレーの中毒により人類は絶滅する。
以上の願いをもって彼の存在のクラスは決定された。
転生者なぞ偽りの立場。其は人間が造り上げた、人類史を最も平和に塗り替えた大災害。
その名をビースト■。
七つの人類悪のひとつ、『カレー』の理を持つ獣である。
勿論嘘です。