俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、暗殺する

 

 未来ではヨーロッパと呼ばれる地域には、多くの国が乱立している。ギリシャ神話圏であれば俺を信仰している国の方が多いし、よほど馬鹿なことをしなければ国が廃れることがないせいもあるだろう。なにしろ俺は国家や社会の防衛にはかなりの力が出せるからな。神を馬鹿にしたり蔑ろにしたり、自分から攻め込んだくせに劣勢になった途端に頼ろうとしたりしなければ基本的にいつでも力は貸してやっているから、国の戦争では基本的に攻め込んだ方が敗北する。戦神の加護だのなんだのを受けていたりする奴もいるが、そういった奴等は基本的に気性が荒いからな。略奪やら強姦やらに走ろうとして、俺の加護を受けた奴に蹴り飛ばされて死ぬこともままある。

 ただ、兵同士が戦って死ぬのは構わないんだ。戦士や騎士と呼ばれる職業軍人の走りが戦場で死ぬのもどうだって良い。問題があるとすればそうした戦争に巻き込まれて死ぬ無辜の民の事であり、俺が守護するはずの孤児たちの事でもある。

 今この世界では、非常に濃厚な神秘が存在しているために神がかなり直接的に力を振るって物事を解決したり、人間社会に干渉したりすることができる。だが、問題はしばらく後になってからだ。

 ソロモン王。聖四字の神によって祝福されて王として生まれ、王として生き、王として死んだ。そこまでなら別にどうでもいいことだが、死ぬ寸前に世界に存在していた自身の持つ全てを神に捧げている。これが問題なのだ。

 ソロモン王が捧げたのは、知識や魔力、千里眼と言った物だけではない。自身が使うことができる魔術と言う神秘や、王として振るっていた権限、そして自身が支配していた世界の全てを献上したのだ。自分が支配していたからと言うそれだけの理由で、非常に多くの人間の魂が、未来が、聖四字の神の物となってしまった。しかも、それらの行動はソロモン王の意思ではなく聖四字の神の計画によって動かされていたというのだから、盛大なマッチポンプと言わざるを得ない。結果として聖四字の神は数多くの信者を手に入れ、さらに世界に存在していた神秘の多くをその身に取り込むようになったわけだ。

 

 ……で、そんなソロモン王がどのあたりの時代の存在かと言うと、丁度今現在なんだよな。

 

 そう言う訳で捧げ物とかされる前に暗殺しておく。何を考えてこんなことをさせようとしたのかは正直どうでもいいが、勝手に全部持ってかれるのはちょっとどころではなく腹が立つ。少し前に善性と悪性を真っ二つに分けたばかりだが、もう一度真っ二つにしてやろうかね? 今度は物理で。

 ソロモン王の最期は老衰だと言われているが、俺はここで一つ新しい説を出してみようと思う。

 

 ソロモン王は何者かに暗殺された。暗殺されたソロモン王の遺体は指輪に守られていて腐ることもなくそこにあり続け、神の手によって天上に持ち去られた。

 そんな終わり方をしたソロモン王が一人くらい居たって、罰は当たらんだろうよ。

 まあそう言う訳で、死んでくれや。面倒な事をされる前にな。

 


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