俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、反撃する

 

 天使と言うのは基本的に成長することの無い存在だ。そもそも神が完成した形で作り上げ、そこに成長と言う機能を組み込まなかったが故にそうなってしまったという所もあるんだが、それでも成長していく、と言うより、変化していく天使たちもいる。それが所謂堕天使と言う存在であり、天使から悪魔へと変わったルシファーもそこに一応含まれる。

 しかし、そもそもどうして悪魔と言う物が存在するのかを考えたことはあるだろうか。それについては、有名な悪魔の名前を並べ、それと同時に西洋に存在していた様々な宗教の神格を調べてみれば簡単にわかる。

 そもそも、悪魔など初めからどこにもいなかったのだ。居たのは異教の神であり、他の世界を作った神格であり、悪魔として貶めたのが人間達であり、それを良しとした聖四字の神でもある。そして、そう言った邪教を信仰する者達を悪魔の使徒として襲撃し、殺害し、その場に在った物を略奪し、土地を征服し、宗教と信仰を奪い去ったのが十字軍。はっきり言って糞共の集まりである。

 ……人間の欲望とは恐ろしいものだ。動物であった頃ならばそういった思考は存在したとしても自分の身の丈以上の物を求めることは早々無いと言うのに、人間はどこまでもどこまでも上を求め続ける。欲の皮の突っ張った奴と言う言葉があるが、人間の中で不必要な物を求めることが全くない奴と言うのは存在しているのだろうか。俺の知る限りだと、存在していたらそれこそ人間ではなく動物のような物だと思うんだが。

 誰かを救いたいと思うのもまた人間の欲望で、誰かを蹴落としてでも自分の思い通りに事を進めたいと思うのもまた欲望。聖人も悪人もどいつもこいつも最終的には欲を捨て去ることなんてできやしないものだ。

 

 そして、それは神でも変わらない。自然の権化である神格だが、自然でありながら意思を持ってしまったが故に加減や理性と言う物を持ち合わせない。一部は無理矢理に後付けさせたが、それでも基本的にはそう言った物を持ちえないため、神と神の間で数多の戦いが起こっているのだ。

 一番そう言った物が多いのは、やはりインドだろう。次点で日本神話だが、日本神話の神格は自然以外からも神になれるというかなりの特殊例のため除外してもいい。日本神話を除外した場合、次点に来るのは拝火教、ゾロアスター神話と言う事になるのだろうか。

 ゾロアスター神話では常に善神と悪神が戦いを繰り広げているはずだが、決着がつくまでに非常に長い時間がかかっているようだし、回数で言えば一回だけだ。一回の戦いでどれだけ戦い続けているのかはわからないが、インドのように周囲に凄まじい被害を出さない分ゾロアスター神話系の神格は人間に優しい存在だと言えるだろう。

 

 ……ところで、ハサン・サッバーフという宗教団体の長を知っているだろうか。彼は暗殺教団の長として教団を恐怖と力で纏め上げていたが、その名前からアサシン、つまり暗殺者と言う言葉ができたのだ。

 そしてそのハサンの信仰する神は、イスラムの神。つまるところ聖四字の神格なのだ。

 ただ、イスラムとユダヤ、キリスト教の間には大きな違いがある。どちらかと言うと戒律が厳しい物が多いのがイスラムだが、特に厳しいところは偶像崇拝の禁止を極限まで極めているという所だ。また、イスラム教ではイエス・キリストは偉大な予言者の一人と言う扱いになっていたりするため、そういう所でキリスト教とは特に馬が合わなかったりする。

 まあ、それでも崇める神が同じと言う所ではお互いの事を認めているのだが、それ以外の神格に対して非常に扱いが悪いというのもこの宗教の特徴だ。

 

 何が言いたいかと言うと、そんな奴らが襲ってきた際に手加減とか必要無いよね、と言うだけの話なんだが。


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