俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、会話する(not物理)

 

 話してみたんだが、予想と大分違う。天使なんてものはどいつもこいつも狂信的な奴ばかりな上に神のためなら自身が死のうが消滅しようが関係ないと言うような輩の集まりだと思っていたんだが、どうやらそれぞれ個性があるらしい。

 神への忠誠心については基本装備らしいが、趣味やら個性やらがそれなりにあるようで意外と話せる奴も居る。勿論糞みたいな奴も居る。その辺りは本当に人間と変わらんな。良い奴もいれば悪い奴も居るし、過激な奴もいれば穏健な奴も居る。全体的に神に対して忠誠は示しているが、それ以外の場所だとかなり緩いのが多い。具体的に言うと趣味とかその辺りで。

 そのあたりで色々と釣ってやったんだが、意外とこいつら欲望に弱い。と言うか俺がわざわざ悪性の部分と分けたはずの聖四字の神まで釣れた。熱い風呂に入れてからのポテトチップとキンキンに冷やしたラガーを出しただけなんだが、こいつらこんなんで釣られて大丈夫なのか? 悪魔とかがいたらあっという間に騙されて素寒貧にされるんじゃないのか?

 ……まさか、もう何度か素寒貧にされているから悪魔達を全力で排斥しに行っているわけじゃないだろうな? まさかまさか違うよな?

 

 ……返事がない。しかも全力で目を逸らされている。こいつらというかここにいる奴らどいつもこいつもそんなことになってんのか? もしかして馬鹿なんじゃなかろうか。

 

「貴様! 我等が主に対して馬鹿とは―――」

「それはそうとこれを見てくれ」

 

 つい最近、俺はとある元天使と出会ってそこそこに意気投合したのだ。どんな内容かというのは置いておくが、ともかく中々話が合ったとだけ理解してくれ。

 で、その結果として目の前にいる大天使……ミカエルの黒歴史を一つ手に入れたわけだ。ヘッドホンで音楽を聴きながら歌っていて、踊りだしたところでコードが抜けてしまって慌てて入れ直すも部屋にルシファーが入ってきて声がうるさいといわれ、ついでに勝手に持って行ってシールまで張ったCDを持ってかれて喧嘩になったという映像だ。

 他人の黒歴史を抉るのに愉悦を感じるという倒錯した趣味を持つ奴が世の中にはいるが、なるほどこれは中々に面白い。流石に愉悦を感じるほどではないが、それでも話の起点とすることくらいは十分できそうだ。

 

「……あ、あの、これは……」

「さーてどうしたんだろうなぁ? ところでもう五、六十万枚ほどあるんだが、見てくか?」

「……」

「……いえ、けっこうです」

「そいつは残念」

 

 ミカエルが負けた! とかそんな感じの声が聞こえてくる気がするが気のせいということにしておこう。そもそも別に勝負していたわけでもないし。

 さて、まあ色々とこいつらのことも分かったし、もう少し真面目な話に入るかね。

 


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