俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、注意する

 

 聖四字の神格。この呼び名を出すと日本ではどこの神かを理解できない奴が多いんだが、聖四字の神とはユダヤ教やイスラム教等で信仰されている神格の事であり、俺の知る未来においては宗教人口はともかく知名度においては凄まじい事になっているキリスト教の本来の神でもある。イエス・キリスト、つまるところ救世主であるイエスが広めようとした宗教がユダヤ教であり、そこから分派したものがキリスト教なのだ。

 そんな聖四字の神だが、そいつは中々に人間らしい存在であったりする。全知全能にして世界の創造主でありながら悪魔や天使の一部に離反され、怒り、嫉妬し、怠惰を貪る事もあると言う。

 人間を愛しながらも試練を与え、世界を愛しながらも世界に終末と言う終わりを作る。そんな存在だ。

 だが、実のところ聖四字の神はかなり若い神格だったりする。人間を作り、動物を作り上げたと伝えられている通り、あの辺りの人間は猿から進化したのではなく初めから人間として作られている者がいた。未来では様々な形で血が混じっているために純粋な進化しない人間など全くと言っていいほど残らないが、少なくともアダムとイヴの直系の子孫はどこかに残っているのだ。どこかと言われても、そもそも俺はそのアダムとイヴに会ったこともないからわからんがな。

 そして、重要なのはこの『人間を作った』と言うところだ。人間はそもそもかなり新しい動物だし、ついでに言うと完成形として作られた人間と猿から進化していく最中の人間の間に互換性があることがおかしい。元々存在していたものを真似て作りでもしない限り、そういうことは無理だろう。

 要するに、聖四字の神は人間や他の生物を作る際に他の世界にすでに存在していた人間を含む動物や植物の姿形を真似て作り上げたのだ。確かにその世界に存在する全ての生物を作り上げたのかもしれないが、それも丸パクリだってのは頂けないよな。

 

「その辺りどう思うよ」

「……」←ガツガツとカツカレーを頬張る聖四字の神(若)

 

 返事が無いのでこちらの都合のいいようにとらせてもらうとして、この若々しい聖四字の神がどうしてここにいるのかと言うと、何とこいつは紅海を割ったことに対して文句を言いに来たのだとか。どうもあそこにいた多くの難民たちを自身の信者としておきたかったらしいが、そんなこと俺に言われたところで困る以外の選択肢が出てこない。ついでに言えば知ったことでもない。馬鹿じゃないのかこいつは。

 ……しかし、こいつが世界の創造者ねぇ……上手いことやれば俺にも世界の一つや二つ作れそうだし、かなり制限はあるが実際に世界くらいならもう作った後だから格の上では俺の方が上なんだが……どうもこいつは中々にえげつない事をやってきそうな気配がある。わざわざ滅ぼさなくてもいい街を滅ぼし、殺さなくともいい人間を殺し、自身のために疫病を流行らせて自身の手で治し、そうして信仰を得ていきそうな気がする。

 まさかとは思うが、こいつ天然痘の神じゃないだろうな? 正確には天然痘を振りまく神だが、まさかそんなことはせんだろう。そんな事をしたとバレたら、周囲の神格から文字通りの意味で袋叩きに合うことは間違いない。そんなことまでして信仰を得たいと……思う奴もいるか。意味が分からない理論で自身を正当化して周りに迷惑をかけまくる奴ってのはどこの時代にもいるもんだ。面倒な事に。

 

 一応、釘だけは刺しておくか。相当太い奴をな。

 

 


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