「お願いします教えてください」
「エロ小僧には教えたくないから嫌だ」
「城之内くんは外に出てもらうので!」
「結局伝わることになるだろうから嫌だ」
「お願いします!何でもしますから!」
「お前なんぞに何でもしてもらったところで大したことにはならんから嫌だ」
ちなみに、城之内と呼ばれていた凡骨風の男は既に黙らされている。顔面が全体的にボコボコになっているのはついさっき杏と呼ばれていた紅一点によってギャグ空間でしか出せないほどの威力で殴り飛ばされたからだ。
その上で色々と請われている。あのエロ小僧の事さえ無ければ普通に教えてやるところだが、今のところ教えたくない。
厳しいかもしれんが、どうもそう言う目で見てくる奴には厳しくなってしまう。七割くらいはアポロンのせいだが、残りの三割程度は俺の在り方に関わる問題だ。元男だからな。仕方無いな。
まあ、そうだな、神として試練の一つでも出してやるか。それを越えて見せたら教えてやろう。
試練の内容は、カレーを食べてもらってその魅力に負けることなく会話して、俺にアテムの名前について聞くことができれば成功と言うもの。薬効は全く無くした代わりにかなり美味い。神としての立場でもかなり美味い。精神力の弱いやつなら身体には全く影響を出さないこのカレーを食べるだけで精神的な依存に陥ることだろう。
まあ、こいつらがそこまで大事に思っている仲間に対しての事だ。問題なくクリアしてくるだろうよ。できなかった時の事は知らん。所詮そいつの思いはその程度だったと言う証明だ。
俺は、評価するべき所は評価する。人間が難行に挑み、そしてそれを突破したならばそれに対する報奨くらいは用意する。他の神話体系ではどうだか知らないが、少なくともギリシャ神話においてはそう言う物だ。
……すまん、一部嘘ついた。ギリシャ神話でも時々理不尽に罰したり嘘ついたりするわ。主に神が。後英雄も。
特に酷いのだと、ペルセウスとヘラクレスだな。ヘラクレスはヘラクレスであってアルカイオスではないことをここに明言しておくが、ともかく割と下衆いこともすることが多いのは間違いない。事実としてな。
だが今回の事に関してはちゃんと約束を守るとも。俺はこういう事に関してはかなり律儀だからな。時々なんでわざわざこんな奴との約束なんて守ってるんだろうなと思っても、あっちから約束を反故にしない限りは守り続けるとも。
契約はしっかり守るってところは、まるで某神話における悪魔のようだな。約束……と言うか、契約は絶対に遵守し、その契約を破ることで弱体するなり反動があるなりと言ったデメリットを持つ存在。まあ、俺にはそう言うデメリットは無いんだが、精神的にそう言うのは守っておきたいという意識はある。反故にされたら? どんな手を使ってでも報復させてもらうが、それがどうしたね?
「まあ、それじゃあこのカレーを食え。その上で今と同じようにオトモダチを思う言葉が吐けたら考えてやろう」
「カレーを、食べるだけ?」
「そうだ。安心しろ、毒やら薬やらは入っていない。ただただ美味いだけのカレーだ。人間が食ったらあまりの美味さにカレーを求める生きる屍になりかねないがな」
「なっ!?」
「実験でどうなるかを試した結果を見せてやろうか」
そうして見せるのは、劇的ビフォーアフター。とても元気に快活に行動していた少年時代の英雄王が、薄汚れて濁った眼でひたすら『かれーかれーかれーかれー』と膝を抱えて座り込みながら呟き続ける姿を見せる。一人だけでは偶然と言う事もあるし、神秘の濃度と時代と場所が大分違うので何十だか何百だかは忘れたが前に盗賊王として襲ってきたバクラに食わせてカレーのためなら何でもするとまで言わせた映像。
まあ、何故かドン引きされたが、俺は悪くない。いきなり襲い掛かって来たのは向こうだったし、ギルガメッシュについては不可抗力だ。
「さて、どうするね?」
俺は目の前にいる未来の魂たちに語り掛けた。
今回のバクラ&アテム
バクラ「ゴブフッ!」
アテム「バクラ! しっかりしろバクラ!」
バクラ「……だ、だが、最後に勝つのはこの俺様よぉ! 城之内にこの試練が突破でき……る…………」
思い出される歴史~ラーのゴッドフェニックスを喰らっても生きていた城之内~
思い出される歴史~ゴッドフェニックス直後にあと五秒あれば勝ってた城之内~
バクラ「……」
アテム「……」
バクラ「…………」
アテム「……いけんじゃね?」
バクラ「……………………」
バクラ「ゲボバァッ!?」
アテム「バクラァァァァァァァ!!」