俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、最終周回

 

 王の顔が入った。どうやらやっと本番らしい。と言っても俺はこれから何かを変えるって訳でもなく、この世界に来てからのいつも通りの生活を続ける。

 カレーを作って、振舞って、代金を貰って、それでまた新しいカレーを作ってみる。俺にとってはやや神秘が薄くなってきたように感じるが、この時代からすれば十分だろう。この時代のエジプトは、当たり前のように魔物が居るからな。

 しかし、結局ここの主人公……と言うか、あの元盗賊王だった狂信者は何が目的だったんだ? これまで何十何百何千と繰り返してきて、結局目的は達成できたんだろうか? 俺にはわからん。

 一つ言えることは、一度この世界が崩壊しそうになったのを止めてからは何も起きないまま王に顔が入ったと言う事だ。あの股間から竜の首が生えた訳の分からないデザインをした自称大邪神を冥界に送り返した直後に冥界ごと焼き払った結果がこれなんだが、あれは何だったんだろうな?

 

 まあともかく、そこそこ続いたこの世界も恐らくこれで最後になるだろう、と言う事だ。俺が止めていたギミックも、恐らく実際に使うことになればこのゲーム盤を丸ごと破壊して余りあるものになる物だと言う事はわかっているし、退去の準備はしておくとしようかね。

 それと、キサラのためにこの世界のこの時代仕様の大鍋を置いておくとしようか。キサラの血族以外が触れたら爆散するようにでもしておけば、某宗教に奪われて自分たちの神が作ったことにして宗教の名を上げるのに使われたりはしないだろう。

 ……色々と、そういうことをする宗教もあるからな。ああ嫌だ嫌だ。宗教ってのは怖いねぇ。俺も宗教的な存在だけども。

 

 さてそう言う訳でそろそろこの世界が終わることが確定した以上、やらなくてはいけないことはままある。この店の保守。世界が崩壊しても結界によって形を保つことができるから問題は無いんだが、それでもあまりに大きい力がかかると壊れる可能性は十分にある。特に俺が居なくなり、神代から未来に進むにつれてそれはより顕著になる。

 神代ならば何万年経とうと一切摩耗しない金属があったりするんだが、遥か未来、西暦にして1800年代まで行けばそう言った神秘の影響が薄れて幻想金属は姿を消す。ミシャグジの塔については周囲の信仰を集め、地球の気脈と繋げ、星の一部として認識させ、さらに色々と手を加えているからこそ遥か未来まで形を保つだろうが、それでも限界はある。何しろ俺は建築については素人同然だ。地震や何かで崩れることも十分に考えられる。

 いくら結界を張ってその内部を神秘で満たすことによって幻想金属をそのままにして、かつ減衰し続ける神秘をルーンと五行の相乗によって増幅し続けていると言っても、ルーンその物の神秘が薄れてしまってはかなり問題が出てくるわけだ。

 どうせなら、俺も知らない未来において頭のおかしい科学者が魔法の科学的再現に成功でもしてくれれば魔法は科学では説明のつかない神秘として、しかし同時に間違いなく存在するものとして認識され、神秘の減衰に歯止めをかけることもできるかもしれないが……はてさて、そんな都合のいいことができるかどうか、怪しいところだ。

 

 まあ、どうしてもそう言う事をしたいのならば、新しく身体を作って西暦2000年頃に今の考えを実行してしまえばいいだけの話なんだが……神が神として人間の世界に深く関わるのはどうかと思うしな。人間としてならともかく、神としては深い関わりを持ちたくない。特に俺は一応ギリシャ神話の神格だからな。ギリシャ神話において女神と関わると大概不幸になるんだが、俺の知る知識においてはヘスティアだけは一応例外になっている。流石にヘラやアルテミスといった色々と迷惑な奴らと一緒にされるのはなぁ……はっきり言って、嫌だ。

 まあ、偶然に期待するとしようかね。

 




 
 今回のバクラ

アテム「貴様、バクラ! ……おい、大丈夫か?」
バクラ「大丈夫に見えるならゲームしてないで病院行け」
アテム「お前が行け」

 五分後、アテムによって救急車を呼ばれて病院に向かうバクラの姿が!
 なお、顔真っ赤、大汗、目が虚ろ、息が荒く、片腕ギプスで車椅子だった模様。

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