千年アイテムを奪われて逆に強くなる人間と言う意味が分からない存在を相手にしつつ、何度も何度も繰り返してすでに試行回数は千回を超えた。
正直、辛い。小指は痛いしケツは痛いし未だに全身を蛞蝓が這い回っているような気がするし、最悪だ。これもみんなあの王のせいだと思うと腸が煮えくり返るような気分だ。絶対殺す。
殺し終えたらどうしてやるか。この世界にゾークを復活させ、世界を闇に呑み込む。そうすればゾークはより強大な力を得て、そしていつしかこの世界とは異なる世界にも手が届くことだろう。
融合次元。シンクロ次元。エクシーズ次元。様々な次元を支配し、自らの力の糧として闇で満たす。大邪神ゾーク・ネクロファデスは全ての世界をこの手に収めるのだ。
だからこそ、こんなところで諦めるわけにはいかない。どんな困難が待ち受けていようとも、俺様はそれを越えて行って見せようじゃねぇか!
千年輪にこびりついていた盗賊王の記憶と、闇の大神官アクナディンのミイラの記憶をジオラマとして焼き付けることで作り上げたこのゲーム盤。王様の記憶が無いから一部作りが甘いが、それでもおよその流れが変わらない以上実験するにはこれで十分だ。
まあ、色々変わりすぎて本当に大丈夫か心配になって来たけどな。もう大丈夫じゃなさそう。と言うかまず大丈夫じゃないだろこれ。もうダメだろいろんな意味で。
盗賊王が盗賊王じゃなく狂信者に。一番弱かった神官は凄まじいパワーアップを果たし、その弟子と揃えば色々とやばい事に。ハゲの神官は精霊が意味わからないことになっていたし、極めつけは訳の分からないカレー屋だ。入ろうとすれば弾かれ、押し入ろうとすれば見つからず、周囲一帯ごと壊そうとすれば脳天打ち抜かれて即死する。本当にもうどうすればいいのかわかったもんじゃない。仕方ないから放置しておくにもあの店がある限りどんどんと一部の神官や衛兵たちが強くなっていくのは止められない。手に負えなくなる前にあの神官共から千年アイテムを奪わなくっちゃならないってのに、無茶苦茶だ。
仕方ないので、最終手段。盗賊王以外の存在の時間を無理矢理ゲーム開始前まで巻き戻す。そうすることでバクラは今の強さのまま他の奴らだけ弱体化する。上手くやれば一方的に殺し尽くすこともできるだろう。と言うか、上手くやらなければ勝ち目がない。はっきり言ってあいつらは色々と反則じみているのだから、こちらにもそうした反則は用意されておかなければ。
時間の支配。一時的に時間を止めたまま行動することができるようにする特殊能力。こちらにとって不都合なことを、時間を巻き戻してなかったことにする能力。そして最後に、ゲーム盤を丸ごとぶち壊す世界崩壊の特殊能力。世界が崩壊する中でゾーク・ネクロファデスがあの王を殺害することができれば、ゾークはこちらの世界にまで手を伸ばすことができる。目的はまずはそこだ。
世界を征服するための第一歩として、このゲームに勝利する。しなければならない。そうでなければ、ゾークの存在の一部であるアクナディンとゾーク本体はいつまでたってもこちらの世界に進出することができないのだから。
……しかし相手はあいつらだ、どうすっかねぇ……。
「ソッコウマホウハツドウ! バーサーカーソウル!」
「あん?」
「ドロー! モンスターカード!」
「ゼァァァッ!」
ザクゥッ!
「なんでカードの精霊が現代に……ガフッ!?」
今回の盗賊王
「祈らなければ……深き地の底、昏き冥界の覇者、ゾーク様……我が信仰をお受け取りください……ゾーク様……」
「ママー、あの人何してるのー?」
「しっ! 見ちゃいけません!」