俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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ホヒ(仮)、減速不能

 

 加速しすぎて戻れなくなった。どうしよう。

 と言うか、そもそもこの加速自体が私の意思から離れた物であって最初から制御なんてできなかったんだけれど、本当にどうしよう。これ。

 このまま加速したままだと、いろいろ困ることがある。大人しく待ってるとかそう言う事ができなくなるし、走って移動しようとすると風の粘りが凄くて大変。そして服は風圧に負けて破れそう。今でもかなり気を使っているんだけれど、時々気を抜いて服の強化を疎かにして斑のできた所から嫌な音が……。

 さらに、呼吸する時も空気がなかなか入ってきてくれないからわざわざこっちの方から前に進んで空気を取り込まなくちゃいけないし、このままだとすごく困る。

 

 そう言う訳で、王宮を抜け出して原因と思しきカレーパンを作ってくれたカレー屋さんへ。物凄い加速している状態の筈なのに、実に当たり前のように対応してもらえた。嬉しいような悲しいようなありがたいことだ。

 

「かくかくしかじか」

「かれかれうまうま」

「どうすれば一般人程度の速度に戻れますか!?」

「1.慣れる 2.諦める 3.死ぬほど頑張る(not比喩) 4.修行」

 

 どうしようどれもこれも地獄が待っているような気しかしない。特に3番。絶対やばい。not比喩がもうね。

 ……まあ、結局頑張らなくちゃいけないんだけどね。じゃないと弊害が凄い。私だけ一般人の数十倍とか数百倍の速度で年を取るとかそんな風になっちゃったら凄く困るとかそんな言葉じゃ表しきれないくらい困る。

 そう言う訳で、死ぬほどではないにしろ頑張ってみることにした。具体的には、私に常時停滞系の魔法をかけることでゆっくりにしようと言う事だ。一般人と同じ程度まで反応速度を遅くすることができれば普通に生活することはできるだろうし、そうでなくとも気分は楽になる。楽になったからと言って解決しているという訳では無いけれど。

 まあそれはそれとして、最悪の場合でもあのカレーパンを食べさえしなければ少しずつ効果は薄れて行くため、戻れないことは無いらしい。

 ただ、そのために必要な時間は体感時間にしておよそ半年。私からするととても長い時間だが、実際に経過している時間は一日程度なんだとか。今の私がどれだけ加速しているのかよくわかる話だ。しかも少しずつ遅くなっていって、最後には相手がちょっと遅いかなと言うくらいまで遅くなっている時間も含めての事だから、今の加速は多分数千倍でも届かないんじゃないかと思う。いったいどれだけ加速すればいいの?

 それと、私が思ったような老化が速くなるだとか寿命が縮むだとかそう言うことは無いみたいだ。なんでも思考速度を無理矢理上げた上で肉体の物理的な速度を思考の速度に追いつくように加速させているだけだから問題ない、そうだ。生理的に加速させた場合や時間を加速させた場合は私の思ったようなことが起きるらしい。怖いね。

 まあ、とにかく待てばいいらしいので、今はこの状態を効率よく使って勉強しよう。時間は文字通りにたっぷりあるけれど、無限じゃないんだからね。

 今日一日で半年分かぁ……うん、頑張らなくちゃ。

 




 
 今日のバクラ

「……あ!あったぁ!」

(……酷ぇ目に合ったぜ)

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