俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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盗賊王、強奪する

 

 強くなり、新たな特殊能力も得たディアバウンドを使って王宮の探索を続ける。壁や闇に潜んでいる際に自身の気配を限りなく薄くするディアバウンドの新たな特殊能力は、これからしようとすることに非常に役に立つことだろう。

 何をするかと言えば、当然だが暗殺だ。神官を殺し、千年アイテムを奪う。奪った千年アイテムから邪念と怨念を吸収し、そして故郷の石板に捧げる。そうすることで私は世界を全て盗み出すことができる力を得ることができる。

 ゆっくりと、ゆっくりと神官の一人に近付いて行く。狙いは、千年(リング)を持つ一人の神官。少し前の模擬決闘において、神官セトの精霊に手も足も出せずに敗北していたのを見たときから、こいつを狙っていたのだ。

 神官の中でも、弱い。特に能力らしい能力は敵を封じる術と、貧弱な単発攻撃のみ。なんでこんな奴が神官になれたのか理解に苦しむが、まあそれでも俺様……私には好都合。殺して奪えばそれで終わりだ。

 それに、どうやら特殊能力を発動している間はこの神官の精霊である幻想の魔術師は動くことができない上に、抑えるだけでもかなりのコストを必要とするらしく相手が強ければ強いほどに拘束できる時間は短くなる。それ以前にその能力はディアバウンドの特殊能力の一つである螺旋波動の前では何の効果ももたらすことはできないだろう。相性の上では最高に美味しい相手だ。

 

 姿を消したまま背後からゆっくりと忍び寄り、そして……首を刎ね―――

 

「危ないお師匠サ魔導波!」

 

 突然、どこかから飛んできた攻撃によって腕が消し飛ばされた。これは、名前こそこの神官の使う攻撃と同じものだが、威力は比べ物にならない。

 私は知っている。この攻撃を使うことができる存在を、ここ数日の調べによって理解している。

 

 神官マハード。その一番弟子である魔導士、マナ。魔術の修業などほとんどしないで、それなり以上の才能でのらりくらりとしていたが、最近になって突然にその実力をはね上げたと言う噂のある魔導士。その身に宿す精霊の名はカレー・マジシャン・ガール。しかしまさか、精霊が居ないにもかかわらずこれだけの威力の攻撃を行えるとは……!

 計算外だったことは認めよう。油断していたことも認めよう。だが、それでも目的は達成した!

 

「! 貴様、それは!?」

「千年輪を!?」

 

 私の操るディアバウンドは、奪う物を奪って壁の中に姿を消した。神官の首を取れなかったのは残念だが、それでも神官の首を取るより大切なことがある。

 偉大なる神、大邪神ゾーク様をこの世界に呼び出す。それこそが私の目的であり、神官の命を奪う事は副産物でしかない。

 そして、この事から神官の中には様々な形で私の事が伝わるだろう。そこからが勝負となる。

 さあ、狩りの始まりだ……!

 




 
 今日のバクラ

「うっしゃぁ!リングゲットぉぉぉ!!」
「ようやく一つ……長かったわぁ……」

 ニャーン

「痛ってぇ! ……あん?」

 ニャーン←千年リングを持って行こうとする背中側が黒、腹側が白い二足歩行する猫

「おいふざけっ、てめっ!!」

 ニャーン←穴を掘って逃げる猫

「……」
「……糞がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

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