俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、発見する

 

 盗賊王と名乗っていた男がいる。だが、今回の盗賊王はこれまでの盗賊王とは一線を画する存在であるようだ。

 王都に来たばかりの盗賊王は、これまでは盗み出した黄金を身に纏い、先王のミイラを引きずっていたが、今回は明らかに違う。

 黄金の代わりに鉛でできている小さな千年アイテムのレプリカを纏い、ミイラを引きずる代わりに小さな千年アイテムの型となったのだろう石板を引きずって歩いている。

 ……今までの盗賊王は剪定されて無くなったのかもしれんな。となると、これまでより遥かに厄介なことになるかもしれん。

 恐らくだが、ここで殺すと即座に周回に入るだろう。こいつを放置した場合にどうなるかを確り見ておくとしようか。今回も王の顔が無いから恐らく成功しようが失敗しようが関係なくやり直しになるだろう。

 あえて今回だけは何の手出しもしないで簡単に事を運ばせておいて、本番になったら思いっきり難易度を上げていくのも面白そうだが、流石に辞めておくとしよう。あまりにも酷すぎる。ゲームで言えばクソゲー扱いすらしてもらえないクソゲーになるぞそれは。

 

 それはそうと盗賊王だが、俺はあいつの目に見覚えがある。具体的に言えば、狂信者だ。

 ある存在を信仰し、盲目的にその存在のためだけに行動する。その存在が実在するか等と言うのは狂信者にとってはどうでも良いことだし、そもそも存在ではなく自身の行動であったり自分自身の行動の全てが正義の名の元に赦されて然るべきだと本気で思い込んでいるような頭のかわいそうな誰かさんも狂信者の枠に入る。

 まったく、面倒な存在になりやがった。何が面倒って、こういう奴は自身一人分の信仰でそれまで存在していない神格を実在のものにしてしまうことがあると言うところだ。非常に面倒だし、はっきり言ってそう言う奴が考え出した神格は大概頭がおかしい。これは過言ではなく単なる事実であり、ついでに言うと体験談でもある。狂信者は面倒臭い。本当に。

 そんな面倒臭い盗賊王だが、今はかなり大人しくしている。今までは現れた途端に王宮に乗り込もうとして衛兵たちにボロカスにされていたんだが、今回はもう少し頭を使うように……いや、どちらかと言うと目的意識の違いかね。王を辱めて殺し、邪神を復活させて力を得ることで地上を盗むことを目的とする訳では無く、邪神を復活させることを目的として行動しているようだ。気配察知系の技術は非常に便利だな。中国拳法ではこういう技術を圏境とか言うんだったか? 華雲邪神スキルで武術やらなんやらの結果に補正がかかっているから助かる。

 どうやって復活させようとしているのかを見てみれば、千年アイテムを集めるのを第一候補として、第二候補として自分で千年アイテムを作り上げてそれで冥界への門を開けることも考えているらしい。鉛でできた千年アイテムはそのための意思表示のような物なんだろうな。

 

 ……記憶やら夢やらと言った非存在系の権能は持っていないが、魔術やら道術と言った技術で補うことはできる。人間の記憶を覗き込むくらいならばそれこそ指先一つをちょいと動かす程度の労力しか使わずに。できるようになったのは割と最近の事なんだが、それでもできることに違いはない。

 スカアハだとか、ギルガメッシュだとか、そういった人間かどうか怪しい奴を相手にそういうことをしようとは思わないがな。そもそもできるかどうかが問題だ。できないだけならともかく、俺がそれをやったとバレたら空間やら世界を越えて反撃してきてもおかしくないからな。

 まずは、自分の精霊獣を単体で王宮に突っ込ませて様子を見るつもりらしい。真正面から行くのではなく、自分の能力を使って一人一人暗殺していくつもりらしい。狂信者ってのはこれだから困る。復讐者だったら復讐に思考が凝り固まっているからまだ扱いやすいんだが、狂信者は何をやるかわからんからな。

 




 
 次回からちょっとベル視点を離れます。

 今日のバクラ

「……よっし!これならだいぶ楽に動かせる!しかもこっちの存在がバレなければ千年アイテムを集めるのもかなり楽になるぜ!」
「気分がいい。すっげぇ気分がいい。今なら小指を差し出してやれるぜ」

 ヒャク ヒク ナナハ…?

「……前言撤回。最悪の気分だ」

 ベリィッ!!!

「爪ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛エ゛エ゛エ゛エ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ!!!?」

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