俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、一時帰還

 

 カレー屋が凄いことになっていた。繁盛しているかと言われればそんなことはなく、まあいつもと変わらない程度に客が入っているようなのだが、その代わりにずいぶんと騒がしくなっている。

 何があってこんなことになっているのかと中を覗いてみれば、新しいバイトことカレー・マジシャン・ガールと、その主であるはずのホヒ(仮)が何故か接客をしており、更にキサラは厨房でカレーをコトコトと煮詰めているようだった。

 神官シャダは出されたカレーを一心不乱に貪り、神官セトはキサラの作った物であろうカレーを静かに食べている。

 何が騒がしいのかと言えば、仕事をしていない時のカレー・マジシャン・ガールとホヒ(仮)の言い合いだ。出したのは自分なんだから少しくらいこっちの言い分も聞けと言うホヒ(仮)と、一度出てからは自力で出続けているんだから知ったことじゃないと言うカレー・マジシャン・ガール。どちらにも言い分はあり、ある意味どちらも正しいのかもしれないが、そんなことはとりあえずどうでもいいから静かにしてくれ。

 食事をする時には、救われていなくちゃならないそうだ。静かでなくともいいし、豊かでなくともいい。だがどんな状況であっても、食事だけは救われていなくちゃならない。俺はそう思う。

 

「つー訳で正座」

「えっ」

「正座。はよ」

「あの」

「はよ」

「……はい」

 

 二人が正座をしたところで、ちょっと本気のカレーを出してみた。店の中に居る全員の視線が俺の持つカレーに集中した気がするが、俺はそれを無視してカレーを食べる。

 このカレーは、この時代からすればちょっとした奇跡の代物だ。何しろマジモンの神話の神が手ずから作り上げた神器から生まれた食材のみを作って作り上げた物。体質や口に合うかどうかはわからないが、神秘が大量に含まれているために一度喰らえば魅了されること間違いなし。好き嫌いはあると思うから間違いなしってのは言い過ぎかもしれんがね。

 だが、少なくともここにいる奴には効果抜群だったらしい。じゅるじゅると涎を垂らしてちょっと人には見せられない顔をしているお嬢さんが二人と、キリッとしているように見せかけてぼたぼたと滴を落とす神官が一人。そして涎を垂らしてはいないもののこの三十秒で八回ほど生唾を飲み込んだ男女が一組。衛兵達はじっと見つめつつもその香りをおかずにもそもそとナンをかじっている。

 とりあえず涎で床を汚し続ける奴らには後で掃除をさせるとして、俺は自分のカレーをみるみる減らしてしまう。食べさせる気は無い。これを人間が食べたらえらいことになるのはメディアでよーく理解したしな。

 カレー中毒になり、カレーを毎日食べなければ手が震え出して魔法陣すらも描くことができなくなってしまう。それどころか三日間食べずにいれば幻覚症状を。一週間食べずにいるとまるで自分の手が腐り落ちているかのように振舞うその姿には、哀愁を感じさせられた。

 幻覚症状とは言え、人間は心の底から信じ込んだことを身体に真実として映し出してしまうことがある。熱くもない火箸を当てられて肌に火傷をしてしまうように、腐ってもいない肉片が腐り落ちて行くようになってしまうかもしれない。

 だからこそ、このオリジナルは神格相手でなければ決して食わせることはできない。それも、神格の中でも特に格の高い奴でなければ戻ってこられなくなる可能性すらある。事実、ギリシャ神話と言う人類史においてはそこまで古くもない神話形態の中ではカレーに溺れた神格は何柱も存在しているのだから間違いではないだろう。

 ……いやまあ、ギリシャ神話自体は人類史の中ではかなり古い方に入るんだが、それ以前の人類史に残っていない神話の神格どもは本当に頭がおかしくなるほど厄介な奴が多すぎるからな。なんだあいつら。ババ抜きやってたらいきなり真実の瞳でこっちだけ手札全公開させられたような気分にさせてくれやがる。俺も存在が反則だろとはよく言われたが、あいつらほどじゃない。

 

 ……世界の裏側に落ちていたあいつらをなんとか俺だけで滅ぼした結果、色々とやばい権能が手に入ったしな。頭おかしすぎるだろうよ。なんだこれ。

 




 
 今日のバクラ

バクラ「……よし、信仰だ。こいつをゾーク・ネクロファデスの狂信者にしよう」
バクラ「そうすれば憎悪やら復讐心やらに加えて信仰でパワーアップできるはず。それに加えて俺様の目的のためにも動かしやすくなる」
バクラ「これでなんとか……できればいいんだがなぁ……神様邪神様ゾーク様!」

 キクガヨイ! バンショウハナンジノナヲサシシメシタ・・・・・・

バクラ「……あん? 鐘の音?」

 コクシノハネ、ユビヲタツカ! アズライール!

バクラ「小指がぁぁぁぁあああア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ェ゛ェ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛イ゛イ゛イ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛!!」

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