王宮内部で神官達による裁判が行われている中、その外、王宮の入り口付近にて激戦が繰り広げられていた。過去形だ。もう終わった。
王宮を守護する衛兵達と、自称『盗賊王』バクラ。憐れなことに盗賊王は胴体を粉々に砕かれて屍を晒すことになったようだが……最近、この世界が何度か繰り返していることに気付いた。
具体的には、王の顔が消えているのに誰もが気付かなくなってからの事だ。初めは確か、俺の店に盗賊王とか言う奴がやって来たとき、腹パンしたら死んだんだが即座に『そいつが俺の店に来なかった世界』に世界そのものが修正された。そう考えると、この世界そのものがある種の記録や記憶によって形作られている世界だと言う事に気付く。神々が治める世界がこうして簡単に剪定されるようなことはそう無いので、世界そのものは変えないまま記録を再生し、そこで色々と改造したり遊んだりしているのだろう。
一種の箱庭とでも言うのだろうか。だが、どうにも実験施設のようにも見えてくる。
この世界を加速させ、どんなことをするとどんな影響が出て、どんな結果になるのかを何度も何度も確認しているようにも見える。俺を放り込んでみたのもその一環と言う訳か。
ヘスティアである俺は気付いていただろうから……情報制限してやがったな?
まあ、これはこれでアリだ。中々に面白い。全てを上から知っている状態での行動もゲームらしくて悪くはないが、本格的に世界に入り込むならこうして自分で様々なことを試してみなけりゃな。
それに、見た感じここはいくらか失敗できる世界らしい。失敗してもある程度まで無かったことにできると言うのは今さっきの流れを見てもわかるし、同じ顔で同じ力を持った盗賊王が何度も現れているにも関わらずこの世界の衛兵達が全くそれを気に止めていない。まるで鬼難易度のゲームの始まりをクリアできるようになるまで何度も何度も繰り返しているかのように。
だったら俺も同じように色々と遊ばせてもらおうじゃないか。この世界がどうなるかはわからないが、一度面倒を見ることを決めた相手を見捨てるのは少々俺の精神衛生的によろしくないからな。色々と仕込ませてもらうとしよう。
何度も同じところを見せられていると少々飽きてくるんだが、見ている限りではどうやら主人公役……と言うか、何度も繰り返す原因となっているのはまず間違いなく盗賊王と呼ばれている男の死だと言う事が分かった。もしかしたらこれは対戦系のゲームであり、顔の消えた王に新しく顔が入っていないのはプレテストのようなことをしているからかもしれない。あるいは、普通に顔が無い状態が普通、と言うかモブキャラのような状態になっているのかもしれないが、流石に神官たちには顔があるのに王にだけ顔が無いと言うのもおかしな話だろう。神官たちどころかそこらを歩いている明らかな町民Dのような存在にも顔があり、声が当てられている。この中で唯一顔の無い存在と言うのは、やはり不気味と言わざるを得ない。
しばらく、この王都を見回ってみるとしようか。何があるかはわからないが、もしかしたら面白いものと出会う事ができるかもしれん。具体的に? 知らん。わからないから人生は面白いらしいぞ?
そうそう、最近ホヒ(仮)が精霊を宿したらしい。めでたい話だが、その精霊と言うのがまた面白おかしい存在で、ほぼ自立して動き回ると言うのだから出した本人も少々困っているそうだ。
そんなホヒ(仮)の精霊がこちら。
カレー・マジシャン・ガール
カレー属性 魔法使い族
攻撃力2800 守備力2400
効果
カレーに影響された存在の攻撃力と防御力を倍あるいは半分にする。この効果は対象を選択した上でどちらかの効果を任意で選択できる。
カレーに影響された存在の攻撃力と防御力を倍あるいは半分にする。この効果は対象を選択した上でどちらかの効果を任意で選択できる。
カレーに影響された存在の攻撃力と防御力を倍あるいは半分にする。この効果は対象を選択した上でどちらかの効果を任意で選択できる。
カレーに影響された存在の攻撃力と防御力を倍あるいは半分にする。この効果は対象を選択した上でどちらかの効果を任意で選択できる。
カレーに影響された存在の攻撃力と防御力を倍あるいは半分にする。この効果は対象を選択した上でどちらかの効果を任意で選択できる。
これらの効果は重複する。
凄い精霊を手に入れたもんだな。よく店に遊びに来てカレー食って帰って行くんだが。
今回のバクラ(ゲーム内含む)
盗賊王「螺旋波動!」
衛兵A「憤怒ぅ!」
衛兵B「あの螺旋の回転と逆方向に槍を回転させ、螺旋波動を打ち払った!」
衛兵C「今だ!」
衛兵D「我ら必殺の!」
衛兵A・B・C・D「囲んで棒で叩く!」
―盗賊王→「ギャァァァァァ!」
バクラ「こいつら強すぎィ! しかも最後刺されてるし!? 貫かれてるし!?」
ツラヌイテホシイト モウシタカ
バクラ「帰れ。マジで帰れ。股間いきりたててないでほんと……おい、なんでこっちにじりじり近付いてきてんだ。俺様にはそんな趣味は―――」
ヤ ラ ナ イ カ
バクラ「アッ――――――――――――――――!!!」
(一応無事です。多分)