俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、客を寄せる

 

 メトメガアウー……いやなんでもない。忘れてくれ。実際俺の目の前でそんな感じのことが起きているだけだ。

 片方はキサラ。その胸の内に強大なる白き竜の精霊を潜ませる白人の少女。

 もう片方はセト。神であるセトではなく、この世界に存在する神官セトだ。

 ラブコメ系の漫画だと、道の曲がり角でぶつかるなどの衝撃的かつ日常ではあまり無い出会いをしてからもう一度転校などと言う形で主人公の日常に現れる。

 つまり、日常と非日常のギャップこそが、相手を気にし始める第一歩と言えるのではないだろうか。

 

 そう言うことで、視察をしていたセトが俺の店の結界に気付き、悪意を持たないままキサラと出会い、見事に一目惚れしてくれた。きっといい常連になってくれるに違いない。

 ……美人局? 何の話やら。俺はちゃんと二人が互いに思い合うのなら祝福することもやぶさかではないぞ? だが、エジプト神話圏においてはおよそ全ての神格は自然の権限であり、婚姻などの人間の文化を司る神格はあまりいなかったはずだから、もしも結ばれたとしても加護をやることは出来んがな。

 

「……」

「……」

 

 メトメガ(ry

 

 しかし、こいつら一体いつまで見つめ合ってる気なのかね。神官セトの連れてきたシャダって奴も呆れた目で見てるんだが……。

 

「で、注文は?」

「……ああ、いや、我々はここに結界を感知してきたのだ。中に罪人が隠れているとも限らなかったのでな。だが、杞憂のようだな。貴方が居るのなら、隠れられるところなど無いだろう」

「仕方なかろう。キサラの奴がここの民に迫害を受けていたからこいつを守るために色々用意してたんだよ。結界も、悪意がある奴を優先的に弾くようにできているからキサラにどうこうしようとする奴はここに入ってこられないようになっているし、こんな国にも肌の色や目の色で人を判断しないような奴が居ると教えてやりたかったんだよ」

「……なるほど」

「まあそう言う訳だから、何か頼んでいきな。記念すべき初の客だし、安くしとくよ」

「ふむ……何を売っているのだ? 非常にいい香りがするが」

「料理だよ。恐らくこの国だと食べたことのある奴は殆ど居ないだろうがな」

 

 そうして出したカレーだが、シャダはその見た目に表情を歪め、しかし香りに惹かれて一口食し―――次の瞬間、カレーが消えた。

 この国に合わせて米ではなくナンでカレーを出してみたんだが、ドはまりしたらしい。しかしそこは育ちがいいのか非常に丁寧に、しかし凄まじい速度で食べ続けているその姿は、ポセイドンと同じような物を思わせる。

 ルーの一滴も残さないようにか、ナンを千切って綺麗にふき取って食べるその姿はもうどう見てもカレー狂。目が血走っていないことだけが救いと言える。

 とりあえず、お偉いさんの顧客をゲットだ。儲けは度外視と言うか、売れようが売れなかろうがある程度は儲かるようにできているから客相手にどうこうする必要は無かったりするんだよな。言わないが。

 

「……王宮に来て料理人にならないか?」

「ならない。めんどい。王相手にタメ口きくぞ俺は。場所は違えど一応神格の欠片だからな」

「……はゐ?」

 

 なんか発音が変だった気もするが、まあどうでもいいことだろう。一部では発音が違う所為で色々と困ることもあるらしいが、俺は基本どこの言葉でも理解できるし話せる。神格ならおよそどんな奴でも持っている基本技術だからな。

 

「……」

「……」

 

 メトメ(ry

 

 お前ら一体いつまで見つめ合ってるんだっての。さっさと働け。あと神官の方は客として来たならなんか頼め。客じゃないならさっさと帰れ。営業妨害でラー呼んで対処すんぞコラ。

 




 
 今日のバクラ

「よーしテストプレイだ」

 ~バクラテストプレイ中~

「……盗賊王が何もできないまま腹パンされて盗ぞ/く王になった……アクナディンが何もしねえで平和なまま終わるゥ……」
「……やっぱ修正だ。どうにかして関わらないようにバクラの性格を弄らねえと……」
「…………」
「記憶だから弄れねえんだよぉ……」ズーン

 スリーフリーズ!

「ズーンて来たァァァァ!!? 右足の小指だけズゥゥゥゥゥゥン!!?」

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