俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、起こす

 

 出汁が強めのスープカレーを作り、その中に米を投入。林檎とマンゴーを使ってスパイスを纏め上げつつ糖質で中毒性を下げる。まあ、中毒と言っても身体に悪い成分は何一つ入っていないし、材料の殆どをこの場所、この時代で入手できるものに限定しているため最悪でも『なんとなくまた食べたいと思うようになる』くらいで済むはずだ。この時代は未だ神秘の濃い時代だが、この時代に生きる者からすれば大した事は無い。普段通りであり、いつもと変わらない世界だ。

 そんな世界の物なのだから食べても問題ないのだが、遥か過去、文字通りの神代における食物を遥か未来の人間が食べたらまず間違いなく様々な問題が起きることだろう。今、ここで取ることができる物で作ったとしても、千年、二千年も過ぎてから同じものを食べさせれば腹を壊す程度では済まない。最悪、文字通りに肉体が変質して怪物として変化してしまう可能性も十分に考えられる。

 ごくたまに、蜥蜴や蛇などが異様に魔力が集中した場所の空気を浴びて竜に変わってしまうことがある。そう言った存在は基本的に当時の生物の魔力など、神秘に対する耐性を貫くほどの魔力を浴びているためその時代の存在から見れば異様に強くも見える。実際に強いかどうかの話は別だし、俺が人間であった頃、西暦二千年代初頭においては魔力などの存在がほぼ全く認知されていなかったためにそう言った変化も殆ど起きなくなっていたが、もしかしたら海底などの人間の目の届かないところでは結構そういうことが起こっていたのかもしれないな。実際のところはよく知らないが。

 

 周囲から向けられる視線を全てスルーしながら作り上げられたカレーリゾットだが、作ってから割とすぐに食べなければ美味さが半減してしまう。そろそろ起きるころだと思ったんだが、俺が行った時にはまだ眠ったままだった。そろそろ起きてくれないとはっきり言っていろいろ困るんだが……まあ、それは仕方あるまい。人間なのだから神からすればちょっとしたことで簡単に死にそうになる。俺が人間だった頃も、ちょっと転んだだけで骨折した爺さん婆さんの話とか、ちょっとゲームのキャラの動きを真似しようとしただけで筋肉の一部に炎症を起こした男とか、普通に居たしな。

 ……ダルシムの真似をして肩を外した馬鹿も居た。いや、あれは普通脱臼程度では済まないと思うんだが、普通に脱臼だけで済ませていた。筋肉が柔らかいからそれで済んだらしいが、もう二度とダルシムの真似はしないと言っていたな。

 なお、その一月後、ウォッカを口に含んでから霧状に噴き出し、ライターでそれに火をつけて遊んでいたら失敗して口の周りを軽く火傷した馬鹿な男がいたらしいが、ダルシムの真似をしていた男との関連性があったかどうかは定かではない。そう言うことにしておいてくれ。思い出すだけで笑ってしまいそうだからな。

 

「……ぅ……」

 

 おや、そうこう言っている間に意識が戻りそうだな。ちょうどいい。カレーリゾットを食べてもらうとしようか。この娘のために作った物でもあるし。

 それと、服も用意しておいた方が良いかもしれん。俺はここで暫くヘスティアカレー古代エジプト支店を開くつもりだし、そこで働いてもらうのも悪くない。

 本当ならホヒ(仮)にも手伝わせようと思っていたんだが、ホヒ(仮)はどうもこの国でも非常に優秀な魔術師の一番弟子をしているらしいからな。魔術の修業の邪魔をしてやるわけにもいくまいよ。

 この娘は本来砂漠の中でもかなり辺境に暮らしていたらしいんだが、そんなところで暮らすと言うのはやはり相当な苦労がある物なのだろう。ここで普通に暮らすことができるのならば、恐らくここで過ごしてもいいと考えるはずだ。

 

 …………運命が見える。実に面白そうな運命だ。よし、やるか。

 




 
 今日のバクラ

「ケ……ケツが……だが鍵は閉めた。これで外から誰かが入ってくることもねえ……s」

 ガリッ!

「なんッ!? 何がッ!? 馬鹿な! 袋はしてある。安全靴も履いた! 包帯だって万全だ! これだけの装甲を抜いてくるものがあるだと……!?」
「あ、アリだと!? まさか、ビニール袋を破り、靴の革を食い破ってから酸で鉄を溶かし、包帯の繊維を噛み切ってから俺に噛み付いたとでも!? いきなりのタイキックはこのための時間稼ぎだとでもいうのか!?」
「クソがっ!踏み潰してやる!」

 ガリガリィッ!!

「左ィィィィィ!?」

 ガリィッ!!

「右ィィィィィ!?」

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