俺は竈の女神様   作:真暇 日間

190 / 330
竈の巫女、探り当てる

 

 ホヒ(仮)の案内を一部スルーしてやってきたのは、どうやら盗賊たちの住む集落……だった場所、らしい。そこら中に死の気配があるのに、魂も怨念も死体すらも何も残っていない。まるで、何かの儀式の生贄にでもしたかのようだ。

 ……いや、実際に生贄にしたのだろう。そうでもなければこんなところから冥界の空気の匂いがするはずもない。バリバリ神代とは違うんだ。地面を掘れば冥府に繋がるような時代は既に過ぎ去り、世界は文字通りの意味で世界を遮る壁によって区分けされ、所謂魔法や魔術的なものを使わなければ繋げることもできないのだから、現世で冥界の空気を感じさせることができるとは思えない。

 いや、方法自体は勿論ある。やろうとすればかなり簡単だ。魔法カードにもあるが、冥府への穴を開けることなら割とできるし、そうでなくとも冥府と現世を逆転させることのできるカードも存在している。現実で使った時点でエジプト神話の神格から睨まれること間違い無しだがな。

 当然、カードとして効果を発動するだけならばなんら問題は無い。しかし、効果が現実に、あるいは名前を忠実に現実に持ってくると非常にまずい物の一つである。

 他にまずいものと言うと、『黄泉転輪』だろうか。生きとし生けるもの全てを世界から弾き出し、既に死んでいるものだけを黄泉より呼び戻す。あれははっきり言ってまずい。本当にまずい。

 ゲームで使うんだったら、使い道はまず間違いなく『黄泉転輪ホルアクティ』だろう。ホルアクティが墓地に無くとも手札にあれば、神のカードが三枚とも除外されている状態で『異次元よりの帰還』を使って三枚とも場に持ってきた上で生け贄に捧げればホルアクティを出せるし、まあ早々負けん。カードを書き替えると言う反則使いが相手でもなければな。

 

 ヨミテンリンガカッテニ!

 イワァァァァァァァァァク!

 

 ……何故か奇妙なものを思い出した。あれには笑ったが、実際にこの世界で食らうと笑えない。決闘で命がかかるのが当たり前の世界だからな。

 なんとかしてそう言ったルールを守らない行為に対する防御方法を確立させなければ、まともに決闘もできやしない。

 だが、よくよく考えてみればこの世界における王朝では似たようなことを常にやっている。具体的には白紙の石板に罪人達から抜き出した魔物を呼び出して召喚させたり、あるいは魔法や罠を使っていたりとやりたい放題だ。

 一応相手が使おうとした石板には干渉しないようにしているようだが、それもいったいどこまで持つことか。いつか相手の石板を使って自分の魔物を呼び出すとかそう言う事をする奴が出てきそうな気もするが、まあ俺には関係ないこった。

 とりあえず、俺も石板を使った魔物、あるいは精霊の召喚を行えるようにならなければいけないな。そこからカードの書き換えに繋がるかもしれないし、カードの書き換えを防ぐ技術にもつながるかもしれん。

 何でもやってみることだ。勿論、間違いなく失敗するだろうことだったり、周囲に与える害が大きすぎると判断された場合ならば話は別だが。

 

 そう言う訳で、まずは人間の心の中に潜む魔物を抜き取る方法と、それを石板に封じる方法を見付けておきたい。確かそれは裁判にも使われていたはずで、王宮のある町では割と普通にされていることだという話だからさっさと行ってみることにしようか。

 方向? ホヒ(仮)に任せる。こんなところまで来ていながら俺に案内ができるんだから王都の場所くらいはわかるだろう。ただ、どうも今は気分が悪そうだ。怨念がどうだとか死の匂いが何だとか言っているが、この程度なら珍しくもない。よくある光景をよくあるままに焼き直しただけでしかない。

 死の集まる所に冥界が近付く。戦地に死神が横行するように、墓地に死者が集うように、ごく当たり前のことだ。

 

 だがまあ、若い奴には辛いのかもしれんな。特に中途半端にそう言う物を感じ取れてしまう奴だと余計にな。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。