俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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やっとまともに始まりました。


竈の巫女、地上に降りる

 

 三度の決闘……あれを決闘と言っていいのかは置いておいて、決闘を乗り越えてようやくエジプト神話圏の地上に到着した。いやしかし砂漠が多くて非常に熱い。暑いではなく熱い。金属製の俺の服に温度変化を妨害する術式をかけていなかったら文字通りの意味で蒸し焼きになっていたかもしれない。

 それから、エジプトを旅するにあたって新しく一つ付け加えた旅装がある。

 それは、マントだ。直射日光を防ぎ、夜の砂漠の中で体温が失われるのを防ぎ、雨も防ぐ。そう言った便利なマントが一枚あるのとないのとでは大きく違う。非常に便利な旅装だ。

 それに、俺の場合は色々と隠さなければいけない物がある。エジプト人の一般的な瞳の色は黒か茶色で、肌の色は褐色だ。しかし俺はと言うと髪こそ黒だが肌は白で瞳は青。はっきり言って非常に目立つのだ。

 だからこそ姿をある程度隠すものが必要になって来るんだが、マントはここでも活躍してくれる。全身を覆うようにすれば肌の色など見ることはできないし、砂漠においてマントで全身を覆い隠すのはごく当たり前のこと。何もおかしいとは思われない。

 人間は自身が異常だと思うものを忌避し、排斥し、消し去ろうとするものだ。だからこそ偉大なことを成し遂げた英雄は何の力も持たない民衆に殺されるし、優秀すぎる存在は疎まれ排除される。

 自分の部下に非常に優秀な存在をおいておきたがる人間も中には居るが、それも相手が何をしようと自分の力で押さえ込むことができると心底から思っているか、あるいは反抗されて蹴落とされることなど一切考えていない愚か者かのどちらかだ。

 ……たまに、相手が優秀であるからこそ現状における状態がどれだけ理想的な物かを考えさせることで反抗させないようにするどころか自分から現状を守らせようとする奴も居るが、それは例外と思ってもらっていい。基本的にそこまで考える奴はいないし、考えたところで実行できるかどうかは話が別だからだ。

 

 そう言う訳で砂漠を歩く。乗り物? 残念、ロードローヴァーはまだ砂漠に対応してないんだよ。メタルの方なら行けるだろうが、あれは戦闘用のバイクだからな。こうしたただの移動に使うと燃費が大分悪いんだ。燃費とか考える必要があるのか怪しいバイクだが、五月蠅いしな。

 とりあえず、一旦砂嵐の無いところに行ってからロードローヴァーを砂漠対応装備に換装させないとな。そもそもバイクで砂漠ってのが間違っているかもしれないが、某南斗聖拳使いの聖帝のバイクのような幅広タイヤを使えば一応走れるしな。理想はキャタピラだが。

 キャタピラか……あれもあれでかなり五月蝿いんだが、こんな砂漠の中をひたすら歩き続けるよりはいくらかましだろう。

 そんなわけでまずは場所を作る。整備中に砂塵が入ってくるのは防がなければいけないのでそこら中にある砂を焼いて岩にした後、煉瓦なんかを作って圧力と熱を加えて圧着させ、簡易的な倉庫のようなものを作り上げる。窓もなく、出入り口すらないこの倉庫はあくまでも一時的な避難場所でしかないので終わったら壊しておくことにして、ここでロードローヴァーの改造をする。防塵と、雨以外の物に対する防御機構。そして砂漠にも対応させておかないと。

 具体的には不可視のシールドの展開と、走る時に前輪の前から後輪の後ろまでの間に道を作る機能。元々空を走る時には使っていたが、それを強化してどんな場所でも前輪と後輪の下を固めることで地形に左右されること無く走ることができるようにしたい。海面だろうが砂漠の流砂の上だろうが問題なく走行可能だ。

 それに、これならキャタピラほど五月蝿くもないし、キャタピラほど手入れが面倒でもない。電子工学系は権能の範疇だからヘスティアとして巫女であるベルの行動に指示をしていたと言う形で使うこともできるしな。

 

 改造が終わったら早速試運転といこうか。エジプト神話では今カードゲームのようなものが流行っているとは言え、人間の中にも自分の中にいる魔物を操ることができる奴もいる。そう言う奴とは戦わなければいけないからな。面倒だが。

 

 


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