竈の女神、決闘開始
エジプト神話はギリシャ神話とそれなりに近い場所にある。なにしろ一部の神格が同一視されていることがあったりするし、ギリシャ神話の原典ではテュポーンとゼウスの戦いの際に多くの神格が西の果てまで逃亡したとある。つまり、ギリシャ神話の西の果てには別の場所が存在していると言う事であり、その場所の事を地図上で確認してみればわかることだが、ギリシャ圏の西にはエジプトが存在している。
そう言う訳で割と近しい存在であるエジプト神話だが、今、そこではとあるものが流行している。
「私のターン! ドロー!」
「カウンター罠発動、強烈なはたき落とし。今のドローカードを墓地に送れ」
「くっ……」
どっかで見たことのあるカードゲームだが、これは俺が考案したわけではない。確かに暇している所に色々と煽りを入れたりネタを出したりはしたが、まさか世界をそう言う風に改変するとは思っていなかったからな。
そう、このカードは人間の魂の形を魔物として封じ、カードに押し込めた物を使っているのだ。人間界でも同じような方法で罪人から魔物を取り出しては石板に封じ、それを使って治安を守ったり王家の墓を守らせたりしていると言うのだから、ギリシャよりもよほどファンタジーな世界だと言えるだろう。
ギリシャは最近はどんどんとおかしくなってきているしな。カレーがエリクサーのような扱いになっていたり、カレーがアンブロシアのような扱いになっていたり、ポセイドンが女よりもカレーに気があるようになったり……原因は全部俺だがな。全部俺のせいだ。
なお、俺もここの世界のカードは持っていたりする。俺に捧げられた物に染み着いた意思やら信仰やらを使っているから回復だったりダメージ無効だったりと言うカードが多いが、物によっては攻撃用のカードも存在している。蜂の集まりをカード化してみたり、日本神話でやった天罰の話なんかがそれにあたるんだが、これがまたなかなか使い勝手がいい。効果は地味だが使い勝手のいいものが多く揃っている感じだな。
その他にも攻撃禁止だったり魔法禁止だったり罠を張ろうとすると自分にダメージが入る物なんかもある。攻撃禁止、罠禁止、魔法も禁止して何もできないままデッキが切れて負けてしまう相手の涙目を見るのは、まあ嫌いではない。一部に涙目のとても似合うかつての女王が居たり、負けると頭を撫でさせてくれる猫頭の女神が居たりするし、このゲーム自体がかなり面白いしな。
それに、人間は無数に存在しても全く同じモンスターを心に飼う物はほぼ存在しない。効果が違っていたり、種族が違っていたり、属性が違っていたり、攻撃力や防御力が違っていたりと様々な違いがあるのだ。
まあ、そんな中にお邪魔するのだから、こっちもカードで語らなければなるまいよ。
俺の言いたいことを察し、俺の前にトト神、クヌム神、ホルス神が立ちはだかる。なお、土産のタルトは涙目の似合う某女王に既に渡してあるので後でこいつらに振舞われることだろう。意見を聞かせてくれるのならばもう少しこいつらの舌に合った物を作ってやれるんだが、動物の頭してる時のこいつらはまともに話が通じないからな。残念ながら聞いてやれん。
一部、玉葱を入れないとかそう言うのは気にしてやれるんだが、そもそも玉葱が大丈夫なのかどうかもわからんからな。会話ってのは本当に大切な物だと言う事がよくわかる。
だが今はカードで語るべし。決闘盤を左腕に装着し、カードをある程度の枚数揃えたデッキを投入。シャッフルされたそのデッキの上から五枚のカードを手札として、決闘は開始される。
「「
初めの相手は創造神クヌム。相手にとって不足無し。だが、俺の八咫ロックデッキに勝てるかな?
はいそう言う訳で遊戯王です。