ケルトは脳筋の集まり。はっきりとそれがわかったので、できる限り近付くのはやめておくことにする。スカアハとかはっきり言って頭おかしいからな。なんだあの怪物。人の皮を被ってれば人間扱いされると思ったら大間違いだからな?
そう言う訳でケルト神話の籤を除いてもう一度引く。しばらくはケルトに行きたくないし、行ったとしてもまた面倒な戦いが待っている。戦闘成分はもう十分に入ったからしばらくはいらんな。
そして引いた紙を開いてみれば、そこには『エジプト神話』の文字が。エジプト神話はギリシャ神話とも普通に繫がりがあるし、一応菓子折りでも持って遊びに行ってみるとしようか。
ただ、あそこの神は何十年かに一人二人増えて行くシステムだからな。王が神として扱われ、死した王は冥界にて修業を積んでから甦る。そう言う信仰があるから、王となった存在は基本的に神として召し上げられ、そして修行と称して様々な雑用を押し付けられるのだ。
と言っても俺には関係の無い事だがな。俺はとっくに神だし、この世界においてかつて俺が人間であったという記録は俺の記憶の中にしか存在しない。ついでに言えばあそこの民は俺の神話の民ではないから俺の庇護下にあるわけでもないし、王と言うのはそう言ったことにも責任を持つものだ。
菓子については、まあ手作りので良いだろう。ただ、あっちの神格は頭がジャッカルだったり猫だったり鳥だったりするからまともな物は食いにくいかもしれない。実際にはそう言う仮面を被っていたり、人前に出る時だけ姿を変えていたりするだけなんだが、俺も恐らく別の神話の神格として客扱いされるだろうから最低限頭を人間のそれから動物のに変えたりするくらいはやるだろう。
……そう言えば、例の神話にはバステト女神が居たな。エジプト神話からの出典だろうが、あの神話は本当に色々な所から物を取ってきすぎていて正確な来歴がわかりにくい。バルバドスとか言うのも確かそう言った別の神話からの出典だったはずだし、よくもまああの時代でそんな殆ど名前も知られていなかっただろう神格の名前まで取り込んだものだ。
おっと、いかんいかん。クトゥルフ神話はフィクションです。実際に存在する神格を語る神話ではありません……と言っておかないと実現しかねないからな。名前を出す前でよかったよかった。
エジプトの菓子ってのはそこまで甘くない物が多いらしい。砂糖はあるし、小麦だって作れるにもかかわらずそうである理由は、恐らくそうして作られた小麦のほぼ全てがパンとして消費されてしまうからだろう。あのあたりだったらパンを作るよりも米を育てた方が良い気もするが、水田を作ろうにも毎年毎年作り直す訳にもいかんだろうから仕方がないか。
そう言う訳でタルトでも作ろうと思う。竈を使う物だし、竈の女神としては良いもんだろう。焼き菓子は得意だしな。
小麦粉、バター、塩少々と砂糖、そして卵。生地の基本はこんなものだ。アレンジはまた今度するとして、今回はこれで生地を作ることにする。エジプトでは煉瓦が良く使われていたはずだし、煉瓦を使った竈もあるはずだ。その竈でも十分に作れる程度の物を作っていこう。