俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、完成させる

 

 形あるものはいつか壊れる。しかし壊れたからと言って直せないと確定したわけではないし、壊れたからこそ次にどうすればより効果が高く、あるいは頑丈に長く使えるのかがわかると言う事もある。

 それはおよそあらゆることに言えることだし、ついでに言えば生き物であっても適用される。神ですら一度完全に失われた物を取り戻すことはできないのだから、神が作り上げたというだけの不完全な存在や、神になることのできなかった物がそうでないというのかある意味ではおかしなことだろう。

 神が世界を作ったと言われているが、ある意味ではそれは正しく、ある意味では間違っている。神が人間も動物も世界すらも作り上げることは確かにあるが、人間に作られる神と言うのも間違いなく存在する。人間が二次元、つまり文章や絵などを使うことで世界を作り上げることができるように、神もまた人間より一つ高いところから世界を作ることができる存在がいる、と言うだけの事でしかないのだ。

 そして、一度世界を作ったからと言ってその世界は永遠に続くわけではない。漫画本は擦り切れ、小説は破れ、伝記は燃え、記録は改竄される。その度に世界は捻じ曲がることになるし、消えてしまうこともしばしばある。だが、その世界の出来が良ければその世界を元に新たな世界が作られることもある。世界は決して永遠ではないが、消え去った世界からも得る物があるし、世界自体が消えてしまっても残される物は確かに存在する。

 

 そう言う訳で完成だ。ベル・セカンド。身体の多くを肉などの脆い物から金属などに移行して頑丈に。かつ傷ついた時には修復が素早くできるように血管のような経路と、その中を通して運ばれる修復用の金属や生体部品。そしてそれらを運び、必要な所に宛がう小さな小さな作業員のような機械。脳は生体部品と超伝導体によって頑丈かつ素早い思考ができるようにして、その上体内には無限に膨張して質量を増し続ける一つの世界を搭載することで暫くの間エネルギーを得なかったとしても問題なく活動できるようにした。

 そして感覚の方だが、この辺りは人間と言うか動物と言う存在の完成度の高さを知ることになった。殆どそのままではあるが、神経などは超伝導体へ。また、超電導と言う事で文字通りにほぼ0秒で判断できるようになったことにより神経の周囲の絶縁さえしっかりしておけば全く問題なく一本で何とかなるようになる。いくつか纏めなければいけないから完全に一本にはしていないし、予備のような形で別経路も用意しているから実質二、三本になるんだけどな。

 

 そして試運転。とりあえずベルに入ってから料理を作る。作るのは久々に作る豆尽くしの朝食。クロノス(クソオヤジ)の腹の中に居た頃はよく作っていたが、出てからは色々と別の材料があったから作ることも少なくなったんだよな。

 初めからちゃんと食べて、飲んで、よく眠っておけばこの身長ももう少し伸びたんじゃないかと思うんだが、過去の事は変えようが無いし仕方のない事だから諦める。ベルの身体でもう少し伸ばしてもよかったんだが、そうするとバランスがおかしくなるから使いにくくなる。趣味なんだから動くことに不都合を感じるようじゃあよろしくない。ちゃんと動けるようにしておかないとと考えれば、まあこうなってしまう。残念だがな。

 豆乳とおからを使ったケーキのような主食に、豆乳そのものな飲み物。おからと三種の野菜、そしてとろろで作ったハンバーグ。硬めに作った豆腐を軽く湯がいて同じく茹でた野菜と一緒に盛り付ける豆腐の刺身のようなもの。よくもまあ、こんなものを考えて作ったもんだ。

 昔はこんなものでもそれなりに美味く感じたが、今ではどうか。とりあえず、醤油で食おうかね。いただきます。

 

 ―――ん、なかなか。

 

 


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