俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、改良する

 

 ふと、考えたことがある。人間の骨の主成分はカルシウム、そしてリンであり、そうあるからこそ強度には限界がある。しかしそれは成長するという人間の特性上、どうにかして自然界の中から自分の身体を作り上げる物を取り込まなければいけなかったからこそカルシウムと言う身体に取り込みやすく、かつ自然界にそれなり以上に存在していた成分を使ったのだと思われる。

 では、もしも人間が初めから完成されていた生物ならばどうだろう。これ以上肉体的に成長する必要などなく、力を付けたり速度を上げたりするのには神の加護を頼るしかない存在だったのならば、わざわざカルシウムなどと言う大して強度があるわけでもない物を人体に取り込むようなことになっていただろうか。それどころか、筋肉を動かすのにもカルシウムが使われることにもならなかっただろう。

 骨はアダマス。筋繊維として使うのは、オリハルコンとハデスメタルを組み合わせることで耐摩耗性を極限まで上げた極細のワイヤー。皮膚は培養していた人間の皮膚と金属の繊維を掛け合わせることで強度を上げ、神経はより伝導速度を上げるために常温超伝導体のチューブを使う。

 結果として体重は重くなるが、関節などの摩擦は減るし筋肉の張力なども上がる。最終的に出すことのできる力や速度は上昇が見込めるはずだ。

 また、ベルとの存在的な繋がりを持たせるために血液に漬け込み、一種の式神のようにしておく。こうしておけば式神である以上、原型が完全に無くなったりしなければ魔力やら何やらを込めれば十分に直すことができる。それどころか最悪の場合切断され消滅させられたとしてももう一度作り直せば問題なく動かすことができるだろう。

 

 だが、これでは足りない。エネルギーの伝導がより速くなったのは悪くないが、生身の部分が無くなってしまうと色々と不都合が出てくる。料理を作る際にも感覚が人間と違うまま作ったりしては美味いと言われる物はそう作れないだろうし、感覚だけは同じものを用意しなければならないだろう。

 この身体を動かすのに必要な物は殆どが水だ。内部の熱を外に出す、あるいは冷やすためにも水が必要だし、エネルギーの元として分解されるのも水。水以外の物はその全てが一度分解されてから質量の塊として再構築され、重心の真ん中に設置されるようにして、一時的に大きな力を出す必要ができたらそこから放出するようにしておいた。これでおよそエネルギーに関しても問題ないだろう。

 そして脳。情報処理に関して人間を含む生物の脳は恐ろしいほどに優れている。一つ一つの脳細胞が処理できる情報量は大したことが無いというのに、その脳細胞の興奮及び鎮静の組み合わせによって人間は周囲の状態を把握することができる。それも、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚などの無数の情報を同時に処理し、そして自分の身体を動かすという判断を瞬時に行っているのだから驚きだ。

 それではそれをどう再現するか。本当にただ再現するだけならば世界の裏側、あるいは世界の外側で行動している時に出会ったとある神性に教えてもらったからできなくはないんだが、今はそれを元に改造している所だからな。参考にはなるがそのまま使う訳にもいかない。そもそもそのまま使ったら神格持つし。

 だから、必要な所だけ抜き出して他の所はオリジナルで埋めていく。正直に言ってなかなか楽しい作業だ。後はゆっくり煮詰めて行くだけで新型は出来上がるだろう。それも、以前の身体よりも力を増したものが、な。

 

 ステータスは一度剥がしたが保存はしてある。作り終わったらこのステータスを張り付けて、ゆっくり馴染ませてからまた出発することになるだろう。いつになるかは正直微妙だが、まあ仕方ない。今回の失敗は俺のせいだしな。甘んじて受け入れるとも。

 

 


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