自作の液体金属の使い魔は、作った五分後に欠点が見つかった。意志を持つが、判断能力が無い。そう作り上げたのはメディアであったが、あまりに判断能力が無さ過ぎていちいち指示をして使うよりも自分でやった方が数倍速いと言う物になってしまったのだ。
まあ、それはそれでイアソニーに拳を叩きこむいい理由付けとなっていたのだが、問題は届くかどうかもわからないほどに遠い場所に挑むのにそう言った足を引っ張る物の存在は邪魔にしかならないのだ。ちなみに、イアソニーとは自身の使い魔につけた名前である。殴るのにいい名前を考えたらそういう類のしか浮かばなかったらしい。
そう言う事で、次はどうにかして自分と同じようなことを考え、しかし自分に逆らうことの無い物を作るかを考えたのだが……いい案が出ない。自分の思考を分割して使うのでは一つ一つの思考速度や能力が落ちるため今でもギリギリの橋を渡っている修行では使えない。しかしそれでも手が欲しい。
自分では作れない。手が届かない。そもそもどこに向かって手を伸ばせばいいのかもわからない。そういう時にはまず、誰か知っていそうな存在に話してみるという手段を取るべきだ。少なくともメディアはそうしたし、相談を受けた相手もそのことを知っていた。
だが、もしかしたらそれは間違いだったのかもしれない。その事実は恐らく、未来でしかわからないことだろうが。
「……なるほど。いいだろう。一つあてがあるから待っていろ」
「あるんですか」
「ある。……居た居た」
じーころろ、じーころろ、じーころじーころろろ、じーころじーこじーころろろ、じーこじーこじーころろ……ぷるるるるるがちゃ。
「もしもし。ガイアで合ってるか? ヘスティアだ。……ああ、無駄に元気にしているよ。それはそれとしてちょいと頼みごとがあるんだが……あ? キュクロプスとギガンテスだけじゃなく色々と押し付けたのはお前だろうが。貸しを返せ。早々難しいもんじゃないからよ。……お前の趣味に現在過去未来の英雄たちの収集ってのあっただろ。メディアってのは入ってるか? ……入ってるか。じゃあコピって寄越せ。原本は必要ない。全部コピって寄越せ。……よし、成立だな。待ってるぞ」
なんだかすごい相手と話をしていたような気がするが私は何も聞いていないので何もわからないなーあー残念だなーいきなり耳が遠くなっちゃったからなー仕方ないなー聞こえなくてもー。
「成立だ。ガイアが英霊図鑑を持ってたからそこからお前の情報をコピーしてその使い魔に張り付ける。少なくともしっかりと話を付けた上で魔力を供給し続けていれば問題なく契約できるだろうし、いい助手にもなってくれるだろうよ」
「…………。
はい、ありがとうございます、ヘスティア様」
「今の一瞬の沈黙は何なのかと問い詰めてやってもいいが、聞かないでおいてやる。
まあ、時間はまだまだたっぷりある。ガイアが図鑑を持って来るまでに一周やっておくか?」
「やめてくださいしんでしまいます。と言うかその修業はそんな気軽にやる物ではありません」
「大丈夫だ。時間を圧縮しているからな。初めの頃、一体につき一月ほどかけていたが、二十四倍速の中では半月程度だ。今なら逃げ切るだけなら各々三日もあれば行けるだろう。やれ」
「け、けれど時間が」
「関係ない。やれ」
あ、これあかんやつや。絶対やらせると決めてるやつや。
よくわからないけれど変な方言のようなものが出てしまうほどのショックを受けつつ、私は頷いた。いや、実際には頷くしか選択肢が残されていなかっただけなのだけれど、それでもまあ頷いたことには変わりない。それに、使い魔を作るのはいつでもできる。特に基礎ができているなら仕事は早く終わるものだしね。
「ああ、そうそう。今回から一部魔術解禁してるから、バフォメット相手は本当に気を付けろよ。死ぬぞ」
「なんで今それを言っ―――
結論から言うと、死なずに済んだ。