龍。それは最強の幻想種であり、存在しているだけで魔力を生み出す存在でもある。物によっては世界を打ち倒し、破壊しつくすことのできる程に強力な種族であり、天災等の人間の手に負えないものの象徴でもあった。
だからこそ、龍殺しを成し遂げた人間は英雄として崇められる。たとえその方法が凄まじくえげつない物であったとしても、どんな手を使っていたとしても、それは変わらない事実である。それは同時に、その竜がそれほどまでに強大な存在であると言う事の証明でもあるのだ。
そう、断じて。
「よしよし……何だ、大人しいな。子供の内はもっとはっちゃけてもいいと思うぞ?」
「……ぐるる」
「……まあ、それも自由だ。限度を超えない程度に自由を楽しめ」
「……」
断じて、人の膝に頭を乗せてゴロゴロと猫のように甘えるような存在ではないはずなのだ。生まれたてだからと言って、これはいくら何でも夢が壊れてしまう。へすてぃあどらごんのようにあれとは言わないが、もう少し、こう、覇気を……ね?
「安心しろ。こいつは最終的にはへすてぃあどらごんとヤマタノヒュドラを超えるだろう。元気に育てばな」
「……その言い方だと、その二頭の子だと思われるのだけど?」
「はっはっは」
「…………え、否定は?」
「はっはっはっは」
「ぐるる」
どうやら否定は無いらしい。と言う事は、本当に……?
いや、否定していないと言うだけだ。否定していないからと言って認めたわけではない。以前もそうやって逃げられた。言葉遊びはカラシニコフの得意分野だ。騙されてはいけない。嘘を言う事こそないけれど、こちらが勘違いしていることを知りつつも本当のことを言わないまま煙に巻いて勘違いを助長させるような存在だ。しっかりと直接口にされるまで、信じてはいけない。私はそのことを学ぶことができた。
「……ん? ああ、首のこれは新しい頭か。最終的にはいくつになるんだ?」
「……ぐる?」
「まあ、そうだな。未来の事なんざわかるわけもなし、か」
「ぐるるる」
「そうだな。八つは欲しいよな」
きっとこれも私を混乱させようとして言っているに違いない。平常心平常心。
「ぐる……ぐるる……くちからびーむだしたい」
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」
「どんなのが出したい?」
「みえない、やつ? だしたい」
「マタシャベッタァアアアアアアアアァァァァァァァ!!!」
「母親のと同じか」
「もっとつよいとうれ゛じ……ぐるる」
「モドッタァァァァァァァァァァァァァァァァ!!?」
「やかましい」
∩▂▅▇█▓▒░(’ω’)←私
気が付いたら私の周りに月兎がたくさんいた。モフモフしているその毛皮がとても気持ちいい。昔触ったことのある金羊毛皮よりも気持ちがいいというのは、流石神獣と言う事なのだろうか。
私も、使い魔にするのならこういうのがいい。竜の牙を使った竜牙兵と言うのも悪くはなさそうだけれど、癒しが無い。使い魔に癒しを求めると言うのはどうなのかと言う意見もあるかも知れないけれど、それも私の生き方だ。放っておいてほしい。
それに、この月兎は非常に強い。私が使い魔を作ったとしてもここまで強くすることができるかどうかわからないから、多分一番初めに作るのはスライムのような魔法生物になるんじゃないだろうかと思う。
……なに? 液体金属の原子核一つ一つを使い魔として繋げた群体にして個体の使い魔? 何それ面白そう。壊されるより吹き飛んだり散ったりする方が早いだろうから、一度作ってしまえば早々減らない便利な使い魔になってくれそうだ。
それに加えて、液体金属の性質的にある程度気体にもなりやすいだろうし、それなりの知能を与えれば助手としても十分に扱うことができそうだ。