力を得るために、私はカラシニコフから力を得る。カラシニコフは神と言うだけあって強大な存在であり、また人間を祝福することも多くあるようだ。
そしてカラシニコフは気に入った特別な相手に対して、これまでには無かった方法で加護を与える。背に、無数の記号を刻み込み、焼き付ける。一瞬の熱が身体中を溶かすように走り、そしてすぐに消えると……私の身体は生まれ変わっていた。
外見では何かが変わったわけではない。背中に文様を彫り込まれたくらいで、その文様も必要の無い時には消しているので外見は全く変わっていないようにも見える。
しかし、生身は大きく変わっている。今までの私そのものを踏み台として、もう一度私と言う存在を作り上げたような、全能感にも近い物を感じることができる。試しに魔術を使ってみれば、今までと同じように使えるのと同時に何か得体のしれないものが身体の中に積み上がって行く感覚がある。
その得体のしれないものは表に出ることはなく内側にこっそりと潜んでいるようなけれど、いったい何なのだろうか。奇妙な感覚で、慣れるまでには時間がかかりそうだ。
『そいつは経験値だな。お前が何かをする度に積み上がり、ある程度の量を溜めた状態で俺の所で更新すればそれまでに使ったステータスに相応しい値が追加される。数値が低いうちはすぐに上がり、高くなってくると上がりにくくなるが、まあ要するに成長の促進を齎すものだ』
……貴女、何者? 復讐の女神と言っていたけれど、こんなことができる物なの?
『実際にできている、と言うのが答えだな。認めたくないなら認めなくとも構わんぞ。現実は変わらないがな』
……それで、今の私の……その、ステータス? と言うのは、どういった物なの?
『初めて与えた時にはオール0だ。それまでの経験を踏み台にしているからスキルがある可能性はあるが、ステータスは誰でもそうなるようにしてある』
そうなると、成長しやすい物やしにくい物もあるんじゃないの?
『当然、ある。お前の場合は魔法の伸びがいいな。他は…………よし、魔法を伸ばすことを考えるか』
話を逸らすほどに悲惨なわけね。わかったわ。それと、スキルは無いの? 魔術スキルがあってもおかしくないと思うのだけれど?
『あるぞ。魔術スキル。あと魔導具作成や薬物作成なんかに使えるスキルもある。まあ、俺の加護は強大な能力を与えるわけじゃなく、単にその者の持ち味をより強く、より早く出させることができるくらいの物だからな。ちゃんと自分の意思で行動しないと結果は付いてこないようになっている』
……それは、何故? 貴女は私の復讐を全肯定すると言っていなかったかしら?
『そう。俺はお前の復讐を全肯定しよう。そのために多少は手も貸そう。標的がいる場所を教えよう。必要な材料も与えるし、実力をつけるにちょうどいい状況も作ってやろう。
だが、お前がそれを実行するかは別の話だ。俺がいくら用意してもお前がやらなければ何も進まない。何も始まらない。だからこそ、俺はお前の力で得た物を使った復讐を見たいのさ。俺が与えられる物の中で最も価値があるものと言えば、精々時間くらいさね』
……私が、やるのね?
『そう、お前が、やれ』
……ふふ。
うふふふふ。
うふふふふははははははははははははは!
ふははははははははははははははははははh
『所で俺ヘスティアって名前なんだが』
……?
『よし黙ったな。意外と使えるもんだ。ちょいと腰砕けにしたのはやり過ぎだったかもしれんな。反省反省、と』
…………はっ!? いったい何が!?
『さあ、今日から修行だ。まずは俺の庭に生息してる猪を相手に戦ってみようか。なに、ちょっと頑丈なだけの普通の猪だ。恐れることなど何もない。突進で岩を砕くのも水面を走るのも空中を駆けるのも地中を地上と同じように走り回るのも普通だからな。恐れることはないだろう? トゥルッフ・トゥルウィスと言う名だが、勝てなくてもいい。負けなければな。
その次は蛇を相手にしよう。少々身体が大きくて頭が八つあり、炎だけでなく猛毒や吹雪まで吐き出すような蛇だが、問題ない。普通だ。
そしてそれから燕だ。音速どころか雷速をも超える燕を打ち落としてもらうだけの簡単な作業だ。空気の刃で斬られるかもしれないから防御はしっかりな。
あとは―――』
……。
拝啓、お父様。
メディアは少し早まったかもしれません―――