コルキスの王女と言えば、裏切りの話や陰謀の話がよく描かれる。しかし、実際の所その起点となったのは神なのである。
今回の事で言えば、初めはヘラからだと言える。イアソンと言う男に目を付けたヘラがイアソンを王にしようと動く。その事が予言されていて、イアソンは遥かコルキスにまで金毛羊の毛皮を取りに行くこととなるわけだ。
そのために様々な存在が巻き込まれていく。例えば、ようやく呪いを解き終わって妻とイチャイチャできるようになったアルカイオスや、薪に命を移された結果薪を燃やし尽くされない限り死ねなくなったメレアグロス。アルテミスの義理の娘として育てられた狩人アタランテ。そう言った多くの英雄とも言える者達が集まり、ギリシャ神話においてある意味最大の英雄たちの集まりであるアルゴー船の集まり、アルゴナウタイが出来上がったわけだ。
……しかしまあ、それはあくまで本来、俺がヘスティアとして活動していない、ある意味ではとても平和で、しかしある意味では非常に荒っぽい世界での話だ。神同士の間で戦争が起こった世界では、神同士の間での権能のやり取りが上手く行かないこともある。そのせいで滅んだ神や消滅した神も多く存在しているが、俺のいるこの世界ではあまり神は死んでいない。神が死ぬとしたら、基本的にはネクタルやアンブロシアを食べなかったことによる老化か、あまりに暇で暇で暇すぎて仕方なかったせいで起きる不意に自殺したくなる衝動に負けての自殺と言う物しかない。少なくとも、俺の知る限りでは。
最近、どこかの愚弟の愚息が大暴れして妻に折檻されて半死半生になったとかいう話を聞いたし、もしかしたら最近では珍しく神が神に殺されると言う事になるかもしれないな。
後、最近甥が喧嘩を売りに来る。軍神で戦神と言うだけで満足しておけばいい物を、何故か俺の持っている武神の権能も欲しいと駄々をこねているのだ。まあ、俺は売られた喧嘩は億倍に
なお、戦神の権能は個人の力量を示す物。軍神の権能は集団戦での力を示す物。どちらも自分以外の何かに勝利することを目的としているが、俺の持っている武神の権能は過去の自身を上回るようになるための権能だ。要するに、あくまで対象は自分でしかないため相手に勝てるかどうかがそれこそ自分自身と言う事になる。一対一なら多分勝てるがな。アレスだと決め手が無いから。
槍は受け止めるし、雷は斬れることがわかってるし、アレスが俺に勝っているものと言ったら多分だが身長と体重と声の大きさと魔力や神威による強化無しでの純粋な筋力位なもんじゃないか? 何でもありなら俺は多分ゼウスに色々とあることない事話して
まったく、噂ってものは本当に怖い。いつの間にか話したことの無いことまで話したことになったり、尾鰭どころか胸鰭腹鰭背鰭尻鰭に立派な翼までついて広まっていくことになるからな。
そんな噂によって、在り方を変えられた存在。それがメディアと言える。本人はあくまで神の思惑に巻き込まれただけ。しかしそんな事は知らない民衆は彼女の事を裏切りの魔女と呼び、そうであることを事実であるかのように広めてしまった。そしてそれは信仰となり、日本で言う妖怪のような形で形を成してしまったのだろう。それも、本来のメディアの魂が失意に塗れ、力を失っているのをいいことにそれを取り込むようにして。
……恨んでいるかもしれないが、まあ、それでも俺が何もしない理由にはなりゃしないわな。