俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、作っちゃった

 

 アダマスは魔法金属であり、魔法が無くなればその強度や硬度は一気に落ちる。その強度はおよそ純鉄と同程度。普通に折れるし曲がる程度のものにしかならなくなってしまう。

 だからこそ俺は新しい物質の創造をしようとしているのだが、それがなかなかに難しい。硬いだけの金属ならばそれなりに作れるが、強度が追いつかない。硬いだけでは叩かれればすぐに割れてしまうし、だからと言って強度を求めれば硬度が失われてしまう。二律背反とはよく言ったものだ。あちらを立てればこちらが立たず。硬度と強度の両立を実現するなら、どちらもそこそこに抑えて中途半端なものを作るしかない。それが俺のいた時代における科学の限界の一つでもある。

 ではどうするか。どうすれば良いか。

 この世に存在しない物質を創れば良い。この世界に現存している物質が俺の希望を満たすことができないのならば、希望を満たすことができるだけの物質を創り上げればいい。それだけのことでしかない。

 創造の権能は一応ある。星を司るため、新たな物質を創り上げるための権能もある。司るものが多すぎる事で制限も増えることがあるが、どちらかと言えばできることが増える方が多い。権能とはそう言うものだ。

 存在しないものを無から作り上げる。メソポタミアの方で得た生物を作る系統の創造ではなく、ギリシャ神話的な無機物の創造ならばそこまで疲れることはない。なにしろ某神話の唯一神はたった六日で地球を作り上げたと言うのだからな。だったら俺もこうして物を作るくらい難しい事ではない。

 俺が作るのは金属。いや、実際には金属どころか鉱物である必要も無いが、金属として作った方が創造しやすい。

 ダイヤモンドよりも硬く、黄金よりも展延性に富み、白金よりも酸や塩基に強く、タングステンよりも熱に強く、イリジウムよりも重くありながらマグネシウムよりも軽い……となると流石に魔法的な要素が必要となるので、同位体次第で非常に重くも軽くもなる、そんな金属を作り上げる。

 数百穰度の大熱量の大竈。それをいくつも並べ、熱量を質量へと変換し、その質量を持つ何かの性質を俺が求める物質へと変えていく。少々どころではなく無駄の出るやり方だが、竈の女神である俺が正確さを最優先して創造を行う場合、これが一番やりやすい。また、存在しないものを存在させる場合、絶対に存在しないまま一度に作るよりも、少量作って存在を確定させておいた方が量次第だが結果的には楽になることが多い。世界の修正力のようなものが働くのだろうが、少しずつ慣れさせていけば、そして非常に希少であり絶対量が少ないと言うことならば認められることも難しくは無い。

 それを理解した上で、エネルギーを弄って質量に変換し、俺の思う物質に……お、できた。

 

 科学的に説明できると言う条件で作り上げた新しい金属。魔法的な効果を一切持たないまま、混ぜ込んで反応させた物質によってその重量が大きく変わる新金属。

 名前をつけてやらなければならないが……さて、どうする? 案がないぞ?

 ハデスの髪から作った金属にはハデスメタルと名をつけた。となるとこの金属は作ったのは俺で、材料は大量の熱だ。熱量を固めて作り上げた金属……そうだな、カロリックメタルとでも名付けるとしよう。熱量といえばヒートだとかそういったものもあるんだが、作り上げてからは熱いわけではないからな。ヒートメタルと名前をつけるのならば、できれば常時熱を発する金属にでもつけてやりたいところだ。

 常時熱を発する金属を作ったなら、次は常時熱を奪い続ける金属も作りたい。そしていつか右側は灼熱、左は極冷のゴーレムを作りたい。名前はフレイザ○ド。忠誠は誓いつつ非情かつ冷酷な奴な。

 どこかで見たことがある? そうか。俺もだ。なんのネタだったかね? よく覚えていないんだが、恐らく人間の頃もよく覚えていなかったんだろうな。神の記憶力は人間から神になった時にしっかりと覚えていたことは忘れないが、その時すでに曖昧になっていた記憶には適用されないようだからな。

 

 


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