俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、強化する

 

 俺の住む家には広大な庭がある。具体的には空間が歪んで凄まじい広さを誇る森と、黄金の林檎や冥界の石榴、ヘラの実や太陽炉搭載型レーザービットの樹などが並ぶ果樹園に、秋になると一面を金色に染め上げる水田、そしてタルタロスに通じる扉の存在する家に、中の時を止める倉庫。更に収穫した果実や穀物から酒を作ったり蒸留したりする酒造場や蒸留所、毒物や薬の研究を行う研究所などが所狭しと並んでいる。俺が境界や空間を司る神じゃなかったらここまで並べるのは難しかっただろうな。

 それに、森には大猪や大鹿、熊などが跋扈し、水田にはヒュドラがのんびりと横になりつつ日中には水田や畑を荒らそうとする獣を殺すと言う番犬のような役割を果たし、畑にはついに自力で衛星軌道上に登って衛星砲ブチ込んでくるようになった最初のレーザービットの樹が存在しているため、あまり空を遮ったりすることができないし、動物達もこちらを襲ってこない限りは殺したりと言うことはしたくない。あちらもそれを理解しているのか、動物達が俺の前に姿を表すのは寿命が来た時だけと言う徹底っぷり。基本的には俺の畑や水田には入ろうとしない。

 ヒュドラの餌?基本的に神同士の間に生まれた存在には食事は必要無い。ヒュドラも食べることはできるが、食べることが必要かどうかと言われればそれは違うわけだしな。

 

 そんな状態で何を強化するかと言えば、俺が治めるこの土地の結界である。今の結界は主に電磁結界と概念結界の複合であり、散弾や呪詛、波濤などの細かいものや形の無いものが相手ならばともかく、一つ以上の巨大な質量を相手にするには荷が重い。

 だが、太陽光を取り込むためにも光を遮るような障壁は張りたくないし、張ってしまうと色々と問題が出る。具体的には作物の収穫量が減る。減ったところで作り出せるんだが、俺の創造神としての権能は主体がギリシャ神話のではなくメソポタミア神話のものだからギリシャ神話の世界ではあまり使いたくはない。少なくとも、人間が世界が球形だと認識するまでは。

 メソポタミア神話世界とギリシャ神話世界が一つになれば自由に使うことができるんだが、今はまだ世界同士を馴染ませている最中。今ここで自由に使ってしまうとギリシャ神話世界とメソポタミア神話世界が引き合って歪に融合してしまう可能性が高い。

 流石に俺の個神的な理由で世界の在り方を変えるのは今更だがどうかと思うので、創造の権能は使えない。同じ理由で境界の権能もだ。

 ベルと言う人間として使う分には問題ないのだが、竈の女神ヘスティアとして使うのは大問題となる。残念ながら。ギリシャ神話世界の境界の権能ならば使っても問題ないが、ヘスティアとして持っている境界の権能は時間の境界や空間の境界の線引きをするものとしての在り方が強い。それの応用で結界を作っているのだが、どうせならさらに強化したいと思うのが人情と言う物だ。俺人間じゃないけども。

 

 そう言う事で用意するのは結界を張るための起点となるもの。五芒星を描くように正五角形になるよう配置し、更にルーンを刻む。刻むルーンは原子核の周囲を回る電子程度の大きさの『空白(ブランク)ルーン』を無数にすることであらゆる力をひたすらに増幅し続けるもの。その中心には火の象徴である熱、水の象徴である水蒸気、大地の象徴である重力、金属の象徴である原子、木の象徴である電子を並べることでバランスを取り、無限に力を回し続ける。

 また、およそどこにでも存在しているものを使っているためにこの結界は壊しても壊しても即座にその場に再生する。それどころかおよそあらゆる物質を五行の力で分解し、吸収し、力として溜め込むことができる。溜め込んだ力は質量の形で保存し、大出力が必要となった時に放出することで巨大な質量を跳ね返すことも打ち砕くこともできるようになるわけだ。

 ついでではあるが、衛星軌道上に行ってしまったレーザービットを遠隔改造し、太陽光を浴びることでそのエネルギーを溜め込むことができるようにしておいた。最大出力で撃てば山の一つ二つ簡単に消し飛ばし、大災害を起こすこともできるだろう。

 ……よほどのことが無ければ、やるつもりは無いがな。

 

 


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