俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、妖怪を生む

 

 諏訪子と神奈子の二柱の初夜……なのだが、俺はそれを覗き見しようと思うほど無粋ではない。どっかの美の神は嬉々として見せつけようとしてきた気もするが、姪とその妻の絡みを見せられた俺はいったいどんな反応をすればいいのかわからない。

 とりあえずその場は顔を真っ赤にして俯いてしまったヘファイストスの頭を軽く撫でてその場を後にしたが、ついでにヘファイストスの動きを止めていた縄と猿轡も取ってしまえばよかったかもしれないとあの後少し考えて思うようになった。

 そして実行しようと戻って扉の前に立ったらお盛んのようだったので自室に戻って寝た。仲良きことは美しきかな。人前でそれはどうかとも思うがね。俺は人じゃないから人前と言う言葉が正しいのかどうか微妙な所だが。

 

 ちなみにだが、男でも女でもある諏訪子は、どちらでもあるが故にたとえ元が女の身体であったとしても女相手に子を作ることができる。勿論、男の身体が元であったとしても男相手に子を作ることもできる。そういう風にした覚えは無いが、神としての在り方からそう言うものだと認識された結果、そういう形に落ち着いたのだろう。

 また、どうやら自力で増えることもできるらしい。これも信仰の形から、無数の存在がいると認識され、そしてそれが実現してしまった物だと考えられる。日本の神格とはこうしていくらでも形を変える物だから付き合い方が難しい。しばらく目を離しているうちに、国津神であった大国主とインド神話で言うマハカーラ、つまり大黒天が同一化され、宝船に乗る大黒様と呼ばれるようなことにもなっている。

 

 そして、それは俺にも言えることだ。ギリシャ神話に所属する俺、つまりヘスティアは変わることが無いが、代わりに日本神話にてミシャグジ様として存在している俺は信仰によって形を変える。今までは治めていた村々から信仰を受け、そして時に畏怖を受け、存在を認識され、ミシャグジとして形作られた。

 だが、今は少し違う。天津神から恐怖の感情を向けられ、恐れられ、俺は神でありながら妖怪としての一面も持ってしまった。それも、ミシャグジとして最も有名な、賽の神としての部分。境界の力を持つ妖怪として。

 

 俺は、正確には俺が今動かしているこの身体は、竈の女神ヘスティアの手で作り上げられた人間としての身体。神造人間であるがゆえに年を取ることは無いが、それでも摩耗する。

 その摩耗した部分に入り込んできたのが、神としての、そして妖怪としての俺。つまりミシャグジであり、境界の妖怪。

 俺は神として純粋であろうとは思わない。しかし、人間として純粋でありたいと思う。ヘスティアの身体に妖怪としての力が宿っていたのなら、俺は嬉々としてその力を使っただろう。しかし今のベルの身体には、人間以外の存在の力を宿す訳にはいかない。次以降、この身体を使う時に魔物として討伐される可能性が出てきてしまうからだ。

 

 だから、俺はこの際、妖怪としての自分と今までの人間としての自分を分け、妖怪としての部分を自由にすることにした。仮にも神から生まれた妖怪だ。それなり以上の力を持つことだろう。

 それに合わせて元々の神が堂々と表に出ている割に事前の準備や策を練る方が得意と思われている事もあって、黒幕として色々動く事が多いくせに何故か様々なところに顔を出しつつ真意には欠片も触れさせない胡散臭い性格になる事が予想できる。実際の俺とは凄まじく違うな。所詮信仰と言う移ろいやすい物から生まれた神だ。そんなものだろう。

 

 ……そう言えば、八坂神奈子は諏訪子の相手を一人でするつもりだろうか? 最低千柱の相手をするのだから、身体が持たないんじゃないかと思うんだが。特に、男から女に変わったばかりの身体では。

 

 




ケロちゃんとガンキャナコの初夜とか需要あります?

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