戦争だ。それも侵略戦争だ。あちらが攻める側でこちらが守る側。信仰が欲しいのはわかるがわざわざ戦争なんて起こすかね普通。命がかかっているわけでも……いや、あちらからすればかかっているのか。命が。
だが、命がけで戦いを挑んでくると言う事は、逆に言えば負ければ命を奪われることを享受すると言う事でもある。命のやり取りってのはあまり好きじゃないんだが、あっちがそれを望んでいると言うのならば致し方あるまいよ。こっちだって死にたいわけじゃあないんだ。迎え撃たせてもらおうじゃないか。
まあ、まずは防衛だ。俺の支配する場所には俺の神気を撒いてあるから、基本的にあっちはこちらの領域の中では術や権能などの一部が使いづらくなっているはずだ。全ての神気を散らして逆に自身の物で満たすことができるのならば状況は一変するだろうが、神気が残っている限りは信仰も失われにくい。
俺の、そして洩矢神の神威は大地に根差した物。塔の神であり豊穣の神としても祀られている俺と、大地の化身としても扱われる事のある蛙から生まれた天罰神。大地を丸ごと入れ替えない限り、俺への信仰は早々失われない。
こちらの神性の防御ができたのなら、次はこちらの飯の種……要するに人間を含んだ俺の信者たちに防御を行わなければならない。人間が失われてしまったら、俺はともかく俺に従うことで生まれ、俺の眷属として周知されているからこそ神として存在を保っていられる洩矢神は消滅してしまう可能性がある。まあ、俺と同じように洩矢神も天罰として人間に対しての抑止力となっているし、同時に理不尽に罰されることも無い代わりに理由があれば間違いなく裁きがあると言う事を理解されている。つまり、裏切りは裁きの対象ととられる可能性があると怖がって改宗を拒む可能性も十分に考えられると言う事だ。
だが、そうなった場合にはあちらの神が何をしてくるか分かった物じゃない。何しろ信仰のために他の神の領地に侵略戦争を仕掛けてくるような奴らだ。見せしめとして集落の一つや二つ焼き払ったところで良心の呵責も何も感じることは無いだろう。死ねばいいのにな。
そう言う事なので、昔取った杵柄、ルーンで対神装備を整える。本来は主神を表す『
この道具で結界を張り、外からやって来る害意のある神格を弱体化させる。『
ただ、その効果を持たせるためにいくつもルーンを刻む必要があるが、それはもう必要経費と言う事で諦める。ルーンを刻んだ道具は即座に送り届け、俺の支配する村々に配置し、洩矢神やそれ以外の俺に臣従した神に『
……これだけやれば、まあ、相手が神や神に仕える存在ならば早々手出しはしてこないだろう。何しろこちらの支配領域に入った途端に神の力が凄まじく減衰するのだから。
出して来たら? 緑髪のエレアのようにしてやれ。