俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、増築する

 

 地上72階層。地下14階層。計86階層の俺の塔。慣れてきたせいか、なんか最近低いような気がしてきた。

 たかが72階。それじゃあサンシャインシティビルとそう変わらないし、俺の知っている現代ではそれよりはるかに高い塔もできていた。つまり、現在の俺の住処は何千年か未来で人間の作り上げたそれに追い越されることになるのだ。

 

 ……まあ、それに関してはどうでもいい。そんなことを気にしているならギリシャ神話世界の俺の家が低かったりすることをもっと気にすると言うか、色々と仕込みはしてあるからまず間違いなく塔自体の強度はこっちの方が上だろうしな。

 だが、塔を高くするなら下にも伸ばさなくてはならないんだが、これ以上下に伸ばすと龍脈が寸断されて色々とまずいことになる。具体的には某白面の者が飛び立った後のようになる可能性が微粒子どころではないレベルで存在する。最終手段だな。

 

 そこで、下の方はまず横に棒を伸ばすように広げて龍脈を回避し、避けた所で再び下に伸ばすようにする。計八本の根が大樹を支えるような形にする訳だ。

 その上で、上向きに塔を伸ばしていく。階層ごとの高さは変えることなく、階層その物を増やしていくのはまさに増築と言えるだろう。増築の結果、文字通りに雲を貫くような高さになってしまったがそれはそれ。より遠くまで見渡せるようになったと言う事で俺には損が無い。

 そもそも今、俺以外にこの辺りに居を構えている神格は俺が作った洩矢神くらいであり、そのほかの多くの神格はここから離れた場所に住んでいる。これは俺の支配する距離が広がっていると言う事でもあるが、それまで存在していた村の守り神もあまりいないと言う事だ。

 この塔を建てたのも今回増築したのも俺の作っている物を置いておくための場所を用意するためであって他者の信仰を奪うつもりなど全く無かったのだが、奪ってしまったものは仕方がないのでもう一度配り直すことにする。

 支配とは、支え配ると書く。支配する側は支配される側に対して命令をし、服従させることができるが、同時に支配している側は支配される側に対してそれなりの物を与え続ける必要がある。俺の現状で言えば、俺が支配している存在から得ている物は信仰、つまり日本式の神格として存在し続けるためのエネルギー。代わりに俺が与えている物は、傲慢でなく過ごしている限り与えられる安全と言ったところか。

 だからこそ、俺は周囲には基本的に気を配ることにしている。見えない所が増えれば目と頭を増やして代用したりもするし、何か問題があれば解決しようとも思う。それが元人間の霊から成り上がり、神として村を守護してきたような存在ならば尚更だ。俺は人間が無理に仕事を引き受けて破滅してしまうのはあまり好きではないが、それを自分から、自分のできない範囲を何とかしつつ行っているならそれを止めるようなことはしない。無粋だし、面倒だ。そういう輩は基本的に人の話を聞かないからな。

 

 そう言う事で、俺は新しく臣従してきた村の者に聞く。これまでの神が治めてきて、何か不満はあったのか、と。多くの者は迷いながらも不満は無いと言い、極一部の者は俺の支配していた村に比べると米などの実りが良くないだとか色々なことを言っているが、それはつまり俺の村の事を知らなければ不満は生まれなかったと言う事を意味している。

 だから俺は、その村の事を良く知っている者……つまり、その神にその村から得た信仰を与え、同時に僅かではあるが俺の作った作物を与え、今までと同じように、しかし俺の意思を組むように村を治めるようにと告げる。これで問題は出てこなくなるはずだ。

 人から生まれた神。その信仰を得ることで俺は神としての存在をより強くすることができる。まあ、別に神になりたいわけじゃなかったし、神で居続けたいわけでもないんだが……まあ、どうせならこの神格、上手く使ってやろうと思ったわけだ。

 

 まあ、安泰安泰。戦争でも起きない限りはのんびり暮らして行こうかね。

 




 
 Q.何階建て?
 A.地上245地下14+21×8階層。

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