俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、馬を作る

 

 古代。戦争において最も時間がかかったことと言えば、軍団を軍団のまま指定された場所に移動させることであったと言われている。よく理解できるし、当然のことだとも思う。現代と違って高速で兵を送るための乗り物も無ければ、そもそも国を守るため、あるいは領土を広げるためだと言われて集められるのは、普段は戦うことをしない農民ばかり。命が最も大事で、戦争なんかしたくなく、父親母親と共に長生きして、子供を作って、一般的な幸せと、一般的な苦労を繰り返しながら生きて行きたいと願う者達を、無理矢理に戦争に繰り出して戦わせるのに苦労をしないわけがない。

 そう言うことで作ってみたのは自作のバイク、ロードローヴァー。これは俺、つまりヘスティアの聖獣がロバであることから少しもじって名前をつけた物だ。バイクは道を走る物だからロードと頭につけたが、地上だけでなく水上や空中も走ることができるのだから付けなくっても良かった気もする。

 このバイクを使って相手を跳ねて止めを刺す時の台詞は当然『ロードローヴァーだ!』にする予定だが、残念ながら時間を止めた場合ロードローヴァーも止まってしまう。非常に残念だ。

 まあ、そんな風に使うことなど早々無いだろうがな。相手もいないし、居たとしても神相手に効果があるような物ではないだろうさ。神秘が……材料、神鉄。燃料、太陽。最高速度、完全光化で光速になるのに加えて時間停止でさらに速くなる。時間を扱えるようになったのは予想外だったが幸運だったと言わざるを得ない。

 

 ……やりすぎだったと思ってはいる。だが俺は後悔しないし謝らない。空間を広げすぎて塔の中でも使えるようになったからな。実際に使えるなら何も問題は無いだろうよ。あれだ、自分の家の庭が広いから自転車を使ったり車を使ったりするのと同じだ。何もおかしいことはない。

 おかしいものがあるとすれば、それは時代くらいなものだろう。バイクがこの時代にあると言うのは間違いなくおかしいが、以前作ったえ〜C北斗◯拳では出て来ているしいいんじゃないだろうか。俺はよく知らないが。

 

 これで移動のための足はできた。なくても変わらないと言うか自分で走った方が速いが、人間だった頃を思い出して少しばかり懐かしくなるものがある。バイクで馬鹿騒ぎといえば、あの峠を思い出す。警察の皆さんごめんなさい。

 ちなみに怪我人はいない。怪我人が出るようなことはよくないからな。気を付けて遊んでいた。気を付けて改造したバイクを、気を付けて乗り、気を付けて運転し、気を付けて警察の追跡から逃げ切るためにナンバープレートのナンバーを削って薄い磁石でナンバーを付け、実際に警察から逃げる時にはちょっと入り組んだ所に入ってから派手な上着を着てナンバーを適当に入れ替えるだけでいける。

 なお、これは普通に犯罪だったりするのでよい子は真似しないようにしてくれ。今俺のいる古代日本ではそんな法は存在しないがな。

 

 さて、それじゃあロードローヴァーも作り終わったことだし、二号機のメタルローヴァーの製作を始めるとしようか。旅行用のロードローヴァーと違って準戦闘用兼レース用に作るつもりだから、求められるものはともかく速度と頑丈さ。火力は正直俺が乗っているだけで十分だから無しにして、まず速度。とりあえず時速で十分の一光年出せるようにしたい。そしてその速度で大気圏に突入しても問題ない耐摩耗性能と耐熱、耐冷性能。操作ミスで頑丈な物にぶつかっても平気なよう耐衝撃性能もつけて、そしてそれらの性能を十全に活かせるだけの操作性とブレーキ性能を持たせなければ危なくて使えやしない。

 いやしかし、物作りは楽しいな。今の俺の身体には日本人の血は流れていないはずなんだが、それでも楽しいもんだ。


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