豆は比較的早めに収穫することができる穀物だが、それは神代においても変わらず最も早く収穫できる穀物とも言われている。豆が大地に地力を与えることは知られていないが、しかし貧民の間でそれなりに広まってはいる。もしも米などの実りが良くなかった時に何とか食べて行くために、そして狩りの結果が芳しくない時のためにも豆も作っているのだ。勿体無い勿体無い。
豆をただ生きるためだけの物としてしか使わないと言うのは本当に勿体ない話だ。ただ、そうでもしないと生きることができないと言う理由もわかるためどうこう言うことはできやしない。余裕がないとそう言う事もできないからな。仕方ない。
仕方ないので現実に嘆きつつも豆を収穫する。とりあえず塔には天気をある程度操る機能を付けたから、少なくとも旱魃になっても問題はないだろう。雲を作って雨を降らすと言う事はできるようになったから、次は雲を散らす方だな。思いっきり高気圧を作ってやればできるんだろうが、思いっきり高気圧を作りすぎると育てている植物にも影響が出る。すでに若干妖怪化しているから大丈夫そうだとも思えるんだが、それでも多少気にかけておきたい。俺の育てた植物たちだしな。
……レーザービットの樹? 最近自力で移動するようになった。ただ、俺に言われたことを覚えているのか畑の周りから移動しようとはしないし、あまり畑の方から栄養を持って行こうともしない。そもそも俺がしっかり栄養をやっているからな。あまり多いとむしろ腐る。
それと、レーザービットが進化した。花になると枝から外れてその辺りを飛び回っているのはそのままだが、夜になると太陽炉を乗せているのをいいことにスポットライトのように光を太くして照射し、光合成を促進するようになった。太陽炉と言っても限界はあるのでエネルギーが切れそうになると、樹に戻ってエネルギーと言うか燃料を補給するようにもなったしな。凄まじく今更だがなんなんだこの樹。
ちなみに、神界でヘスティアの髪留めをやっているレーザービットはヘスティアの神気に中てられてか植物でありながら数秒だけならゼウスの雷を防ぎきるレーザーバリアを張ることができるようになっている。天空と雷の神性の最大威力の雷霆の槍を受け止める植物の花って、なんなんだろうな。しかも受け止めた後はまた髪留めに戻るし。使い捨てじゃないんだぜ? 信じられるか? ちなみに俺は信じられなかった。
なお、愚弟一号との大喧嘩で雷霆まで持ち出してきた挙句に誤射してきた愚弟二号には暫く腐ってもらった。一月ほどして臭いから治してほしいとヘラが言ってくるまで、全身の肉が腐り落ちた状態と言う北欧神話のロキの娘もびっくりな状態のまま過ごしてもらったが、身体の状態よりも精神の状態の方がダメージでかそうに見えた。普段はそうでもないが、それでもやっぱりカレー中毒なんだなと納得はしないまでも理解した瞬間だった。ちなみにカレーを食べ始めたらみるみる修復され、三十秒後、そこにはおかわりと大声をあげながら空になった皿を俺に向けてくる愚弟二号の姿があった。その隣にはすでに三杯目に突入している愚弟一号が居たのは言うまでもない。カレー中毒者がカレーを食べている時に騒いではいけない。また、食事中に賑やかにするのは構わないが、食事中に騒がしくするのはアウト。カレー中毒者
……しかし、そういう所で考えるとやっぱり俺はインド神話系統と相性が悪い。マジの殴り合いとか、あるいは完全に何でもありの戦争とかだったら俺が勝つ自信はあるが、俺の知ってるギリシャ神話の神とインド神話の神ってのはどいつもこいつも理不尽だったり外道だったり下衆だったり我儘だったりするもんで戦争において一方的に常識とか良識を意識させようとしてきたりするだろうからな。
まあ、そんな感じに戦闘力において多くのギリシャ神話系の神格を上回っているインド神話系の神格だが、その不死性においてはギリシャ神話系の神格に劣っている。ギリシャ神話系の神格はマジモンの不死。しかしインド神話系の神格はけして不死ではないからな。
……ガルーダだけは例外。あれはもう存在そのものが反則だから。概念的に『敵対者の十倍強くなる』ようになっている奴をどうやって殺せばいいのやら。……百倍だったか?
まあ、敵対することになったら敵対しないように殺すか、あるいは完全な相性ゲーに持ち込んで一方的に何もさせずに勝つけどな。