俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、住処を作る

 

 雨風の吹き込んで来ない家というのは重要だ。人間の身体でいるとその重要さが身に染みる。物理的に。

 そう言う事で周囲の木を切り倒して家……家、と言っていいのかどうかは微妙だが、まあ家を建てることにした。材料はもちろん木、そしてそこらの土を細かく細かく砕いたものを竈で焼き上げた煉瓦だ。正直、ここまで俺が竈の神でよかったと思ったことは無い。いや、無いことは無い。クソ親父の方のクロノスの腹の中で核融合炉を作れた時はそれはもう嬉しかった。良い報復の方法が見つかったわけだしな。

 だが、今はそれより大事なことがある。なにしろ煉瓦が作れるし、ついでに製鉄までできるのd……ああ、うん、そう言えば製鉄段階から金属を作ることはしてこなかったな。巫女としての身体でできたからか、本体の方でももう少し頑張れば取れそうだ。製鉄の権能。

 だが、製鉄の権能が本当に必要なのは俺ではなく、ギリシャ神話の筆頭鍛冶師であるヘファイストスだと思うんだが……むしろ俺としてはヘファイストスが製鉄の権能を取ってなかったことの方が驚きだ。普通なら、鍛冶を始めるならそこから習うと思うんだがな?

 

 ……製鉄、か。そう言えば、日本においてまともな鉄が武器として普及し始めたのはいつごろになってからだ? むしろ今が西暦に直して何年あたりだ? 時間軸のずれやらなにやらのせいで正確な時間が推測できないんだが、とりあえず俺が知っている時代よりははるか昔の筈だ。年代的にいつごろかの推測は……日本の形からして日本から人間が滅ぶほどの未来ではないと推測できるし、ついでに非常に森林が多く、かつ民家が非常に少ないが猿人が存在しないように見えるという点から……まあ、紀元前の事ではあるが、同時に昔過ぎるということも無いだろう。紀元前で千から千五百と言ったところだろうか。

 それぐらいなら近場の見所までそう時間があるわけでもない。俺が興味があるのはあくまで神話の世界、神話の時代であって、人が神話を排し始めた頃の話にははっきり言って興味がない。人間が、当然のように神を信仰していた頃。その時代のみに興味があると言ってもいいだろう。

 言ってしまえば、中世まではそれなりに見ておきたい場所が多い。第二次世界大戦に干渉するのも面白そうだとは思うが、あれは神の争いではなく人間同士の争いだ。先に他の神が手を出してこない限り、俺はそう言ったことに手出しをする気は無い。人間の争いは人間が始末をつけるべきだからな。

 

 そうこうしている間に家の土台は完成した。地震の無い地域なら適当に固めておけばいいんだが、地震の多い日本でただ頑丈なだけの家屋は簡単に壊れてしまう。

 そこで、方向としては二つある。一つは現代日本方式。地震の振動を柔らかく受け流し、建物自体が揺れを吸収するような作りにすること。もう一つが少々どころではない無茶な方式。簡単に言えば、地震で木が倒れる? 鉄でやれ。鉄でも駄目? ならアダマスだ! 作戦。別の言い方をするなら神の金属の硬度を活かした単なるゴリ押し。流石に地殻のエネルギーを全部ぶち込まれちゃあきついだろうが、大概の地震だったら平気だろう。

 ……まあ、両方活かそうか。材料に神の金属を使いながら、しかし衝撃を吸収するような作りにしよう。その方が頑丈に作れるだろうしな。

 

 ……ちょっとした小屋を作るつもりだったが、よそう。塔でも建てようか。威風堂々とした巨大な塔を。どうせ味噌や醤油その他を作るのに場所は必要になるんだし、周りに何にもない場所じゃあ客に気付かれない。一階はいつもの通り料理でも出すようにして、二階より上に住んでいればいいだろう。鉄でも作ることのできない高い塔。はてさて、何日で作れるかね?

 


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