俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、日本に立つ

 神秘の濃い国。しかし、同時にその神秘を全て表に出すことを良しとしない国。それが俺の感じた日本と言う国だった。……いや、今の呼び方をすると大和と言うんだったっけか? 近場過ぎて正直あまりよく覚えていないんだよなぁ……。

 だが、わかることはある。土着の神と、後に来た神。俺はその中でならば後者に入るが、同時に天津神とはまた別の分類を受けると言う事。

 そして、日本の米は美味いと言う事だ。

 

 焼き鮭。そして醤油。鮭は塩焼きも美味いが、醤油で作ったたれをかけて香ばしくなったものを少しずつ食べるのも悪くない。主食はやっぱり米だ。

 そして味噌。豆味噌と米味噌、主に作られていたのはこのくらいで、俺も詳しくは知らないんだが……まあ、美味けりゃそれでいい。美味いからこれでいい。

 カレーはカレーで美味いが、日本人としてはやっぱり醤油に味噌が一番だ。日本人じゃない奴らには理解してもらえないだろうから口に出したことは無いがな。

 籤という形で俺は日本に来たんだが、実の所そうしなかった場合まず間違いなく日本に来ていただろう。やったところで日本に来てしまったんだが、ただの偶然だ。全部日本神話になっているとかそういうことはない。確認した。偶然以外の何物でも無い。

 しかしあれだな、何かしたわけでも無いのに突然こうやって言い訳のような言葉を重ねると何故かより怪しく感じる。実際にしていないのにな。

 

 さて、それはそれとして、俺はこの日本で日本食を再現しよう。この近くに村や神の住処がないのは確認した。八百万の神と言われるだけあって砂一粒にすら神が宿る可能性のある国だが、それはある程度存在が確立しており、かつ認識されていなければ存在することは難しい。一度認識されてしまえばそう簡単には消えてしまうようなことはなくなるが、一度認識されるまでが長いのだ。

 ちなみに俺は作られ方が違うからな。日本の八百万の神格のように認識されずとも存在できるが、代わりに俺のような神はいつの間にか増えるようなことはない。増えるにはそれなりの理由が必要になる。言ってみれば、人間や動物と似た性質の神であるわけだ。

 完全に信仰や認識などから生まれた神格は、精神的な認識の集合体、別の言い方をするならば概念的な存在だ。肉体を持たなかったり、肉体があったとしても簡単に崩れてしまったりする。日本の神格のうち、その存在に名前がついてはっきりとしている神格の殆どは人間のように神格同士が交わって生まれてくる。天照、月夜見、素戔嗚などと言った天津神がそうだ。

 なお、天津神ではなく国津神の中には八百万の神格が含まれることもある。特に有名なものは、あらゆる土着神の頂点であるミジャクジ、またはそのミジャクジと同一視されることとなった洩矢神がそれだ。

 俺の場合、日本で広まるとするなら神としてより妖怪として広まりそうな気がする。妖怪として広まったからと言って妖怪らしく生きて行くつもりは無いが、結果として妖怪のように語られてしまうことはあるかもしれん。何しろこの世界に俺を信仰する存在なんて居やしないし、ついでに目的が美味い飯だからな。神として振る舞う気とか全く無し。

 だが、神として振る舞わないとは言ったが、巫女として振舞わないとは言っていない。ヘスティアの巫女であるベルとして、一人でも祭り上げて行くとしよう。

 ……それに、日本神話では神が降りてくるということが珍しく無い。人間の身体を使えば割と自由に振る舞える。俺がヘスティアとして動いたところで問題らしい問題はありゃしない。

 そう言う事で、村と畑……日本では畑よりも水田の方が多いんだったか。麦畑よりも効率がいいし、悪く無いな。

 ただ、この世界でも獣は出るし、蒔いた種を食べる鳥もいる。そう言った存在から守らなければいけないし、それに稲として育てる前に米粒を畑に植えてからにしなければ、ただ米が腐るだけで終わってしまう。芽が出てある程度育つまでは畑で育てる必要があるからな。

 現在の状態から考えると、恐らく水田という形で米を育てるのは方法として確立していない。何故か持っているスキルによるブーストを試してみる絶好の機会だと言えるだろう。失敗した所で食事に困ることはないしな。


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