中国の拳法小説と言うのは、中々面白い。普通じゃ考えられない拳法が当然のように使われていたり、拳法家の使う気の力で即座にとは行かないものの凄まじい速度で傷が治ったり、あるいは人間には到底出来なさそうな技術を当然のように使っていたりする描写に満ちていて、そう言った物を見ていると人間の想像力の凄さを理解できるからだ。
だが、基本的にパターンは決まっている。市井の少年が偶然に拳法と出会い、師匠に鍛えられ、力をつけ、そしてその小説に存在する悪役を倒す。するとその少年は皇帝から呼び出され、実は少年が皇帝の血を引いていたことが明らかになって、皇帝の娘の一人を嫁に貰って皇帝として暮らす。基本的にはそう言う流れで終わるのだ。
ワンパターンと言うかなんというか、だが、そんなワンパターンの中でも変わるものと変わらないものがある。
変わる物は、主に主人公の使う拳法の名前だ。無数に存在している拳法のうち、自身の使う拳法を広めるためなのか何なのかは知ったことではないが、主人公はその話によって無数の拳法を使い分ける。ある話では北派の豪拳を。また別の話では南派の武器格闘を。武器も袖に隠せるような小さなものから、明らかに人間の体躯を超えるような巨大なものまで、数え切れないほどだ。
そして、同じように敵の使う拳法も、その話によって変わる。策や好み、あるいは実益などを考えられて当時のもっとも広く使われている拳法や、あるいは秘伝とされている拳法を適当にでっち上げて使ったりもしている。
そうして変わるものの多い中で、変わらないものがある。地名、人名、立場、等々、様々な物がその作品によって変わるが、多くの作品の中で変わらず存在している物があった。
ラスボスの名前である。
時には小国をいくつも滅ぼした拳法の達人であり、時には鳥よりも速く、馬よりも長く駆け続けることができた仙人であり、無数の人間を殺した悪鬼であり、悪逆の限りを尽くすだけのただの人間。小説の山場。最後の戦闘において、彼はこう呼び続けられる。
―――火云邪神、と。
……さて、それはそれとしてベルのステータスを見てくれ。
神造人間完成型試作一号機『ベル』
Lv.13
力:SS3224 耐久:S1490 器用:SSS6671 敏捷:S1820 魔力:SSSS13027 幸運:SSS 異常無効 疑似神格:B 料理術:SSSS カレー製作:SSS 薬膳:SSS 拳法:SS 殺害術:SS 魔導:SSS
《魔法》
【カマドガミ】 ・ヘスティアの意思を受けて行動する。常時発動。
【マジックキャスター】 ・ヘスティアの使える魔法を使用できる。
《スキル》
【
・竈神ヘスティアが竈神としてできることに関すること限定で神の権能の一部を使用できる。反転、調整しようとすると反動あり
・カレー制作時及び今まで存在しなかった物の製造時に極大の補正。この補正は重複する。
・死亡時、ヘスティアの場所に肉体が転移する。
【
・近接戦闘及び武器使用時に特大の補正。
・魔法及び魔力使用時に特大の補正。
・定められた『主人公』以外に敗北しない。『主人公』は世界及び時代によって変動する。
・性質が『善』の者とそりが合いにくくなる【隠し効果】
……俺、どうやらラスボスになったらしい。いやまあ俺と言うかベルがなんだが、なんでこうなった。俺はもちろんベルとして動いていた時もラスボスらしいことは何もしてないはずなんだが……むしろ裏ボスの方が近いぞ? ラスボスと違って放置しておけば基本的に平和な所とか、物語的には倒さなくてもエンディングを迎えることができる所とか。
だと言うのに、何故俺がラスボス扱い? 訂正を要求する。
……おや?
【
↓
【
・戦闘能力を悟られにくくなる。
・近接戦闘及び武器使用時に絶大なる補正。
・魔力及び魔法使用時に絶大なる補正。
・定められた『主人公』以外に敗北しなくなる。
・定められた『主人公』と出会いやすくなる。関係がどうなるかは不明。
・ステータスの伸びが良くなる。ただしレベルの上りは遅くなる。
・自身についての隠匿能力を身に着ける。
・このスキルは神ヘスティア以外には表示されない【隠し効果】
・あらゆる状態異常を無効化する【隠し効果】
・敗北から再起した場合、全てのステータスが二倍になった状態でレベルを一つ上げる。ただし、全力で戦って敗北した時のみこの効果は発揮される。【隠し効果】
・神の力を無制限に使用可能【隠し効果】
……いや、うん、違う、そうじゃない。そうじゃないんだ。