俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、安価する

 

「はいそれじゃあカレーラーメンでも食べながら話を聞いてくれ。あとギル坊、鎧に汁が跳ねてるから拭いとけ」

「ぬぅっ!? おのれぇ……!」

「はいはいこっち。動かないでね」

 

 カレーうどんやらカレーラーメンやらの汁は布系の服にとっては天敵だな、マジで。

 

「おいゼウス。跳ね散らかしてんじゃねえよポセイドンを見習え。あんだけの速度で麺をすすりながら一滴も汁を飛ばしてないポセイドンを見習え」

「いやいやあれは無理じゃろ」

「ポセイドンにできている→できない訳では無い→できる可能性はある→できる→やれ」

「えぇぇぇぇぇぇ!?」

「チュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルゴックンカレーうめぇ!おかわり!」

 

 ポセイドンの器にもう一杯カレーラーメンを盛り付けて、それから全員と向き直る。これはマーボーカレーについての意見を聞いて次回までにフィードバックするための意見交換会のようなものだ。

 

「では初めに、絶対評価を決めようか。まず、今回のマーボーカレーだが、カレーと比べてとかそう言う言葉を付けず、美味かったか不味かったかを聞きたい」

 

 こうして始まった意見交換だが、基本的には好意的な意見が多かった。一部『辛さが足りない』と言うのもあったが、十分に人気が出ていると言ってもいい出来だったようだ。

 ただし、今まで食べたことの無い味だ。食べ慣れたカレーと一緒に食べているためそれなりに受け入れられそうではあるが、もしもマーボー単体で食べていたならばここまで受け入れられていたかどうか怪しいところだ。俺は多分無理だったんじゃないかと思っているが。

 勿論、時間をかければマーボーや他の料理も広がっていくことだろう。しかし、突然出したのでは時間が足りない。人間は古い物から新しい物に移り変わる時にはそれなりの時間が必要だ。それは神も例外ではない。古い物を排して新しい物を受け入れるのは、それなりに時間の必要な事であるのだ。

 だが、進もうとしなければ進まない。流されようにも、まずはほんの小さなものであったとしてもそちらに流れを作るところから始めなければ流されることすらできはしない。自身にできることをして、自身の思うように動くためには力が、あるいは数が必要だ。それを何とかしようと、俺はこうしてこういう場を作っているわけだ。

 

「じゃあ次。と言ってもこれはメソポタミアの方にしか関係ないことかもしれんが、マーボーカレーもメニューにあった方が良いか?」

「うむ!あればたまには食べるぞ我は!」

「作り方教えてもらえれば作るよ僕が!」

 

 仲がよろしいようで結構結構。そう言えばこいつら結婚してたな。子供はできたのだろうか。俺の知っているギルガメッシュ叙事詩では、最終的にギルガメッシュは自身の子供に国を継がせている。そう考えれば国を次世代に継承すると言う非常に正しい事をやっている筈なんだが、この世界ではギルガメッシュは不老不死のまま。わざわざ次の世代に継がせる意味は無いだろうが……どうなんだ? 自分にもしもの事があった時のために一応教えてはいる感じか?

 まあ、その辺りの事は正直どうでもいい。人間のことはできるだけ人間の中で解決してくれ。ギル坊は人間が混じってて自称は王だから多分人間。エンキドゥは土人形だが自称はギル坊の嫁らしいので人間でいいんじゃないかね。人間か人間じゃないかなんて本人次第でいいと思うんだがね。人間だったのに思い込みで竜になる女とか、純粋に人間だったはずなのに人の噂で鬼にされたらいつの間にかマジで鬼になってた男とか、恨み辛みを藁人形にぶつけていたらいつの間にか鬼になっていた女とか、それはもう色々といるからな。

 ちなみに一番酷いのだと、元々ただ普通に生きていただけの人間だったのに何があったのか女神に生まれ変わっていた元男の話だな。いやほんと、何があったのかねぇ?

 


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