戻って来たベルを一度眠らせ、精査する。すると動かしていた間は気付かなかった様々な問題が浮かび上がってきた。
まず、身体について。人間として作ったはずのその身体は、背に刻んだステータスの効果かそれとも神器で出したものばかり食べていたせいか神のそれに近くなっていた。これについてはベルに宿りつつある神格を分離して吸収すれば問題ない。俺がベルの集めた分の信仰を受けることになるが……カレーの女神として凄まじく信仰されているな。俺は確かにカレーの女神ではあるが、それ以前に竈の神の筈なんだがなぁ……。
そして出てきた問題その2。ベルの身体に刻まれたステータスだ。
神造人間完成型試作一号機『ベル』
Lv.2058
力:S912 耐久:C655 器用:SSS5209 敏捷:E495 魔力:SSSS10557 幸運:SSS 異常無効 疑似神格:B 料理術:SSSS カレー製作:SSS 薬膳:SSS
《魔法》
【カマドガミ】 ・ヘスティアの意思を受けて行動する。常時発動。
【マジックキャスター】 ・ヘスティアの使える魔法を使用できる。
《スキル》
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おかしい。俺は竈の神だと言うのになぜカレー神や武神の扱いをされているんだ? 流石に創造神の扱いはされていないようだが、それにしてもおかしい。
ベルの身体は人間のそれであるように作った。だと言うのに出てきたスキルには『神』の文字。人間の中ではかなりのものであるようにしたが、それでもまだ人間である筈なのだ。
最後の問題は、寿命についてだ。カレーを食べれば問題ないが、どうも元々の寿命を大きく超過したが故の反動のようなものを受けているようだ。
身体能力や精神状況には何も影響はないが、使い続けた身体に全体的にガタが来はじめている。今のうちに治しておけば問題ないだろうが、少々時間が必要だ。具体的には一月ほど。上手いことやれば数日でも行けそうだが、初めての試みであるわけだし慎重にやった方がいいだろう。
……それに、ステータス自体の調整もしないといけない。神の力はそれぞれの神によって多少違うもの。それを利用すれば俺の刻んだステータスを他の神が利用することはできなくなる。参照するだけならできるだろうが、それも後々変えてしまおう。やろうとすればできないことではないからな。
具体的にはパソコンの暗証番号的なやつ。長すぎると面倒だが短すぎると簡単に使われてしまうような物だが、それを弄っているのがこちらにわかるようにすれば暫く時間を稼ぐだけでなんとかなるしなんとかできる。
いつの時代も個人認証は重要だ。それを怠ると面倒なことになる。それもちょっとした面倒ではなく、社会が一つ崩壊するような大きな面倒に繋がる可能性も0ではない。
それは人間の社会に限らず、神格の作る国にも当てはまる。要するに、でかい上に致命的になりうる面倒を回避するために、普段のちょっとした面倒を続ける訳だ。必要ではあるが、その必要性を理解しにくい。しかもその必要性を理解できるのは、致命的な状況となってから。無くしてからその必要性に気付く物は、大概そこに存在するのが当たり前となってしまうほどに大切な物であることが多い。
……まあ、失ってからもう一度得ようとするのは何であろうと非常に難しいものだ。それが大切なものであればあるほどにその傾向は顕著である。
例えば、平穏な生活などはその筆頭とも言えるだろう。俺にはもう期待できないものだな。