俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、帰る

 

 ギルガメッシュは人であり、同時に神である。神であるがゆえに不老であったが、しかしその不老は神の呪詛によって打ち消され、人間のそれと変わらない程度まで削られた。

 だからこそ、不老であるはずのギルガメッシュは再び不老不死になるために薬を求めて旅をしていたわけだ。

 

 では、この世界のギルガメッシュはどうなのかと言うと……。

 

「はぐっ!はぐはぐっ!がふっ!」

「……もう少し味わって食べてほしいんだけど? せっかく僕が作ったんだからさ」

「……はむ……もぐもぐ……はく………………ガツガツガツガツ!」

「二口が限界かよぉ……君らしいけどさ」

 

 カレーに魅了された。そしてカレーを食べると若返るようになった。意味がわからない。カレーにそんな効果は無いはずなんだが……どうしてこうなった。むしろ何がどうなればこうなる? 意味がわからん。

 

「ふも、ふももっふもぐもぐむぐっ」

「口にカレーが入ってるのに喋るの辞めようね。と言うか喋れてないよ」

「ふも? もぎゅっぐもぐ?」

「いや、わかるよ? 僕はわかるよ? でも僕がわかるのとギルが喋れてるのには関連無いから。ギルは喋れてないけど僕がわかるってだけの話」

「もっぎゅ!」

「はいはいありがとね親友」

 

 こいつらが何言ってるのかわからない。と言うかあんだけもぎゅもぎゅしながら喋ろうとして失敗してるにも拘らずカレーが全く溢れてない。何を極めようとしてるんだよこいつは?

 

「……で、俺の予言通り振られたイシュタル。何か言いたいことは?」

「まだ振られてない!結婚するならエンキドゥより美味いカレーを作れる奴とじゃないと嫌だって言われたから努力してるところだ!」

「…………その論理だと現在あいつと結婚できる可能性があるの俺だけじゃね? しないけど。……しないって言ってんだろうがそんな目で俺を見るな」

「もぐっぐもぐもぐもぎゅもぐ!」

「何言ってるかわからねえ。エンキドゥ」

「『漸く(オレ)に毎日カレーを作ってくれる気になったか!』だってさ」

「毎日食いに来い。そうすれば毎日作ってやる。客としてだがな」

 

 俺はいつものようにそう返す。いつも通りと言うだけあって、もうこの台詞も百や二百では効かないほど口にしてきた気がする。実際に気のせいではなさそうだが。

 

 それに、俺は結婚する気は無い。相手が男であろうと女であろうと、どうにも合わんのだ。男だから、女だから、人間だから、神だから。理由はよくわからないが、どれもこれも俺とは違う存在に見えて仕方ない。

 そう言う理由もあって、ギルガメッシュを相手に婚姻を結ぶようなことはまずありえない。よほどのことが無い限りな。

 それに、もしも本当に『よほどの事』が起きてしまったら、俺は多分さっさとこの世界から出ていくだろう。万が一そうなっても大丈夫なように、材料を生み出す大釜とその材料から物を作れる存在を作り出したのだ。今ではそれに加えてこの世界出身の神格の一柱も努力しているようだし……今、俺が居なくなったところで何も問題ないような気もする。

 そうだな……この世界にも結構長居したことだし、そろそろ新しい世界に行くか、あるいは一度元居た世界に戻ってみるのもいいかもしれん。それなりの時間をこの世界で過ごしたし、もしかしたらこの身体にも調整が必要になっているかもしれん。メンテナンスとして帰ってみるか。

 

 そうと決まればやることは単純。竈を置いて、手紙を書いて、ヘスティア()から直通で大釜のスペアを送ってもらってそれからこの国を出る。竈があればヘスティア()は大体どこからでも見ることができるし、大体どこにでも物を送ることもできる。人を送ることもまあできなくはない。つまり、この店が存在している限り、来ようとすればいつでも来れるわけだ。

 では、こっそりと。

 


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