ヘスティアは孤児を守る神であり、同時に家庭を守る守護神である。これに厨二病的な解釈を加えると、家族を支える大黒柱としての役割と、子供を守る役割の二つから、孤児達の父親であり母親であると言う表現をすることができる。
だからなんだと思うかもしれないが、これは意外にもかなり有用な解釈であったりする。
孤児とは、親のいない子供を指す言葉だ。親はすでに死んでしまっているのか、それとも親は生きているが捨てられてしまったのかはわからないが、どちらにしろそういった事情によって庇護者のいないままに生きている者たち。それが孤児だ。
重要なのは、子供であることは孤児であるかどうかにおいて重要な事ではないと言うことだ。ただ、本人の意思とは関係なく親と呼べる存在がいなかったり、死に別れていたり、捨てられていたりしていればそれは孤児だと言える。本人の認識がどうあろうと、だ。
そして、
つまり、だ。
「……おかーさん?」
「お母さんじゃないよーお姉さんだよー名前はヘスティアだよーこっちはデメテルだよー君のお姉さん二号だよー」
俺がヘラにお母さん扱いされるのも全部
新しく妹が入ってきて、面倒を見なくちゃならない相手が増えた。武器の改造改良はある程度目処が立っていて後は実際に作るだけなんだが、新しい妹に色々と教えるのに時間をとられてしまう。
とりあえず大切なこととして、食事はこの場所には存在しないこと。俺の作った竈や武器には近付かないこと。欲しいものがあったら材料さえあって作れそうなものだったら作るから言うだけ言ってみること。それだけは伝えておいた。
ちなみにだが、俺達は
繋がりは
まあ、少なくとも俺が出るときにはしっかりと入った順番に出ていくことにしよう。腹を開くようにして進んでいけば、いつかはちゃんとした外に繋がるだろう。時間や場所はわからないが、それでもヘスティアが産まれてからヘラが産まれてすぐまでの、神からすれば本当に短い時間。恐らく百年は過ぎていない……と思われる。神の感覚に馴染む前にこうして腹の中に納められてしまったので、実際にはどれだけ時間が過ぎたのかもわからないがな。
それはそれとして、子供は教育せねばならない。特にヘラはギリシャ神話におけるメンヘラとして割と有名だ。嫉妬しても実力行使がゼウスに通じないせいでゼウスの浮気相手やその子供にばかりえげつない試練やら何やらを押し付ける。それはどう考えても問題がある。もしもヘラクレス辺りが本気でキレたら、神話のヘラでは勝ち目がない。ガチの戦闘脳とアグレッシブな引きこもり系女神ではその戦闘力に差がありすぎる。だからこそ、今のうちに矯正できるところは矯正しておきたい。
やることは簡単。単なるお勉強だ。実利と感情を切り分けて、感情が実利を無視できないほど膨れ上がれば感情を優先しても良い。そして、浮気男に対して効率的なお説教の方法。これについては前世の俺の父親がエロゲ主人公かと言いたくなるくらいにモテていたし、父の友人たちも同じようにモテまくる系統の人間だったので……まあ、やり方はよく知っている。俺はむしろそうやって説教されている奴らを肴に香りのキッツイ酒を飲むのが好きだった。ちなみに未成年だったので俺も怒られる側に回った。酒は美味かったけどな。
ただ、この怒り方を完璧に実行できるようになると惚れた相手のほとんど全員がM属性持ちになると言うのが欠点らしい。ヘラがそうしようとするのは恐らくゼウスだけになると思うので、未来ではゼウスがMになる可能性があるわけだ。
……主神がドMか……救えねぇな、この神話。