僕の目の前で、突如としてペットボトルに放尿をし始めた彼女。
白鈴女子学園の理事長である風莉お嬢様。
見えてはならない女性の大事なところが丸見えで、ペットボトルに尿が跳ね返る音がして。
凄い光景だった。こんな光景を編入初日の夜に見るなんて、思ってもいなかった。
否応なく、昼間、理事長室で話していた会話を思い出す。
お婆ちゃんに育てられたと言って、優しい目をしていた風莉お嬢様の姿を。
その時に間違いなく、彼女は言った筈だ。
「ばあやは悪い事をした時は叱ってくれて」
お婆ちゃんっ!
本当に風莉お嬢様の事、叱ってくれたんですかっ!
僕が知らなかっただけでお婆ちゃんの知識の中では、トイレはペットボトルでしても平気だったんですかっ!
風莉お嬢様はこうも言った筈だ。
「私が今の私に育ったのも、ばあやがそういう風に育ててくれたから」
お婆ちゃんっ!!
アウト―――――!
育て方、間違ってますっ! 一体どういう育て方をしたら、ペットボトルに放尿する彼女に育つんですかっ!
しかも、し終えた尿入りのペットボトルはベッドの脇に放置。
した後なのにティッシュで拭かなければ、パンツも脱いだままという有様。
すぐに叱ってパンツを履いてもらったけれど、この人は露出狂か何かなのだろうか。
僕は人並みに育てられた自覚はある。したくなったらトイレには行く。間違ってもペットボトルにしようとは思わない。
僕だって短い間だけど、お婆ちゃんと一緒に暮らしていたのに。同じ人に育てられた筈なのに、一体どうしてここまで違いがあるのだろう。
見た目は美少女なのに、とても残念なお嬢様。
完全に駄目人間。
僕の視線が気になったんだと思う。
「飛鳥さん、どうかしたの?」
「いえ、何でもありません」
人前で放尿しても平然としている風莉お嬢様。
風莉お嬢様に対してお婆ちゃんが一体どんな教育をしたのか?
大切なモノを教わっている筈なのに、何かが欠けているのはお嬢様自身故か。
それとも、お婆ちゃんがいなくなった瞬間に、自堕落な生活に突入してしまって今の風莉お嬢様になったのか。
ひょっとして上流階級ではこれが当たり前なのか?
もしかして、僕の方が変で、世間ではこれが当たり前なのか?
なんて一瞬、馬鹿な事を疑問に思ってしまった程だ。
漫画とかでもエッチなのじゃなければ、放尿シーンなんて出てこないし、風莉お嬢様がおかしいに決まっている。
ただ、いつからペットボトルでするようになったのだろう?
誰に教わって、始めたんだろう?
白鈴女子学園に通った初日の夜から、色々な事が物凄く気になる僕なのであった。