地を這う虫は空を望む   作:しろねこパンチ

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どうもしろねこパンチです。

今回は「時間には限りがある。だから、誰かの人生を生きることで浪費するべきではない」が座右の銘の彼の登場です。


頂点の少年

アスナとパーティーを組んでからすぐ迷宮区を出て、会議の開催されるトールバーナへと向かった。道中アスナのステータスを聞いたが迷宮区に篭り続けていたためかレベルは13となかなか高かった。それでも本来はかなり高いらしい。キリト曰く俺の場合は異常らしい。本来避けるべきリトルペネントの実付をあえて狙ってレベリングをしていたのだがキリトや最近知り合った情報屋からは自殺志願者やら薬でキメてるのかなどと大変失礼な事を言われた。隠蔽スキルとステルスヒッキーを併用すれば気付かれないため、ウィークポイントにスキルを叩き込めば一撃で屠れるし、実付をやればゴ〇ブリよろしく湧いてくるので安全でなおかつ効率もいい最高のレベリング方法だと思ったんだがな…

 

俺の話のあとはアスナに戦闘のいろはを教えた。スイッチやローテなど集団戦闘で必要なことや、アスナのバリバリ初期装備をできる限り強化するための方法など、話は尽きることなくトールバーナに着くまでの時間はあっという間に過ぎていった。

 

トールバーナの噴水広場、ここが今回の会場だ。噴水の周りには30人程のプレイヤーが集まっていた。

 

 

「はーい!そろそろ始めたいと思いまーす。そこの人達、あと3歩こっちに来てくれ!」

 

材木座だと!?中二病デブと思しき声の主は長身で青髪の片手剣使いだ。

 

「オレの呼びかけに応じてくれてありがとう!とりあえず自己紹介しとくな!オレはディアベル、気持ち的に《ナイト》やってます!」

 

おいおいいくら何でも声似すぎだろ、キモイわ。しかも《ナイト》か、若干中二病が混じってなくもないかもしれん。しかしあの中二病デブとは打って変わって、冗談交じりに自己紹介する彼はなぜこんな奴がVRMMOをやっているのかと思ってしまうほどのイケメンだった。しかもコミュ力がカンストしているようだ。クソ、爆発しろ。

 

「さっそく本題に入るけど昨日オレ達のパーティーが、ボス部屋を発見した!」

 

集まったプレイヤー達からどよめきが起こる。

 

「1ヶ月、ここまで1ヶ月かかったけど・・・それでもオレ達は示さなきゃならない、ボスを倒して第2層に行って、このゲームはクリア出来るんだと他のみんなに教えてやるんだ!それがオレ達トッププレイヤーの義務だ!そうだろみんな!」

 

喝采が沸き起こる。あのコミュ力…あいつを思い出すな。天地がひっくり返っても相容れないだろうあの男とは。現実の事を思い出していると和気あいあいとした雰囲気が一変した。

 

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 

雰囲気を切り裂くように低い声が広場に通る。人垣が割れ声の主が見える。小柄だががっしりとした体格に特徴的な髪型、やや大型の片手剣を背負うその青年はディアベルの美声とは正反対のダミ声で唸った。

 

「コイツだけは言わてもらわんと、お仲間ごっこは出来へんなぁ」

 

いるんだよなぁ、こうゆう空気の読めない自己中心的な奴って。

 

「コイツってのは何の事かな?でも発言の前に名乗って欲しいな」

 

青年は鼻を鳴らし数歩前に出て名乗り始めた。

 

「わいはキバオウってもんや。こんなかに詫び入れなあかん奴らがいるはずや」

「詫び?誰が、誰にだい?」

「決まっとるやろ!ベータ上がりのクソ共が!死んでいった2000人にや!」

 

キバオウが吼えるように話し出す。

 

「ベータ上がりのクソ共はあの日からすぐ始まりの街から消えよった。そして旨い狩場を独占して自分達ばかりつよーなりおった。こんなかにもおるはずや、知らん顔して仲間に入れてもらおう思てる小狡い奴らが。そいつらに土下座させてアイテムとコルを出して貰わんとパーティメンバーとして命は預けられへんなぁ!」

 

ベータテスターであるキリトは苦虫を潰したような顔をしていた。おそらくあの野武士ヅラの男を思い出しておるのだろう。しかし……あいつはアホか?今この瞬間にそれについて言及することはデメリットしかない。実力のあるテスターとニュービーの間に亀裂を生み、不協和音を起こす。これは最悪だ。

 

「おいそこのモ〇っとボール」

「だ、だれがモ〇っとボールやねん!てかどこにいるんや姿をみせぇ!」

「後ろだ」

「のわぁ!?」

 

モヤっとボール…長いな、キバオウだったか。キバオウがべらべら喋っている間にステルスヒッキーを使って回り込んだ。こんなのも気付けないなんて雑魚だな。ふとキリトたちの方を見るとキリトは手を頭にやり、アスナは驚いたような顔をして俺と俺がいた場所を交互に見ていた。

 

「どっから出よったんや!?」

「普通に近付いたんだが?」

「アホか!そんなんやったら気付けん分けないやろ!」

「そんな事はどうでもいいんだが…お前テスターがどうって言ってたな」

「だ、だったらなんや、文句でもあるんか!」

「文句っつうか、お前馬鹿か」

「何やと!?」

「そもそもベータテスターが1人も死んでないと思っているのか?」

 

俺はアスナと出会う前にとある情報屋と会った。そいつにベータテスターの死者数を調べてもらった。ベータテストを受けたのは1000人、その中で正式サービスに参加したのは恐らく700~800人、さらにその中で400人程がこの世界を去っている。現在死んでいったのは2000人そのうち新規プレイヤーの死亡率はおよそ17%、ベータテスターの死亡率は50%とベータテスターのほうが高い。知識と経験が必ずしも安全と言うわけでは無いことを示している。むしろ知識と経験があった分慢心し、本サービスでの変更点に気付けなかったのだろう。

 

「それにテスター無しでこのゲーム攻略出来るとでも思ってんのか?RPGといえば初見殺しなんて普通にあるだろう。まあ序盤じゃ少ないだろうが。それでも引っかかるやつは沢山いるだろうな、普通のRPGならミスっても次があるからな。だがこの世界は1度ミスったら終わりなんだ、死んだやつから情報は得られない。だからテスター達が必要なんだ。それともなにか?テスター達から装備とコル奪って戦えなくしておきながら情報も搾り取んのか?ゲームの中だから奴隷みたいに扱っても問題無いとでも言いたいのか?だとしたら自己中で最低最悪の屑野郎だな」

 

キバオウは顔を真っ赤にすると俺の胸倉を掴んできた。

 

「お前何様や!テスターがわいらニュービーを放置したのは事実やろ!テスターこそ自己中やないか!」

「…あの日、始まりの街でデスゲームになった瞬間どう思った」

「どうってどうゆうことや」

「いきなりゲームオーバー=現実の死だと言われたんだ。怖くは無かったのか?」

「怖いに決まっとるやろ!誰だって死にたくないわ!」

「テスターだって同じだ」

 

俺の言葉にキバオウは俺の胸倉を掴んでいた腕を放しあとさずる。そして俺は追い討ちをかけるように言葉を続ける。

 

「それにお前の装備、結構いいやつだな。そこまで強化すんのに結構な時間が掛かったんだろうな。でもお前のお仲間さんはお前ほど高くないな。自分がパーティーのリーダーだから優先的に上げたのか。テスターにはコルよこせ装備よこせという割にニュービーの間でも格差があんのか。それともお前テスターか?」

「わいはニュービーや!」

「口で言うだけならなんとでもなる。ニュービーだと偽ってほかの奴らより強い事を見せつけグループ内で上位に立つ。ちょっと考えれば直ぐに思いつく。お前の装備がいいのはお前がテスターで効率良く強化できたからじゃないのか?」

 

俺の言葉にキバオウのパーティーメンバーはキバオウから数歩距離を置き始めた。

 

「ちょ、ちょいまちや!わいはニュービーや!あいつに騙されんな!」

 

キバオウは距離を置かれたことがショックだったのか顔を青くし弁明していた。人間はいつも残酷だ。口では仲間だと言ってもなにかあればすぐに裏切る。こいつらもあいつらと一緒だ。

 

「ニュービーと証明することはできな「発言いいかな?」

 

キバオウを最後の追い討ちをかけようとすると聞き慣れた声に被せられた。

 

「俺達はみんな、このデスゲームに捕らえられた仲間だろ?ニュービーもテスターも境遇は一緒だ。こんなことで争い合うなんて馬鹿げてる。みんな仲良くするべきだ」

 

そう言ってこちらに近づいてきた。ディアベルと同じく誰もがイケメンだと認める顔立ちに金髪が目立つの少年。まさかこいつもこの世界に来ていたとはな。

 

「君は誰だい?さっきも言ったんだけど発言する際は名乗ってもらえないかな?」

 

金髪の少年は表面上は申し訳なさそうにしていた。

 

「すみませんでした。俺はハヤト。俺はみんなでこのゲームを攻略したい」




出番はほとんどなかったですが葉山隼人登場です。

それにしても八幡がやけに喋る喋る。キャラ崩壊が激しすぎる…
1層の間にもう何人かガイルキャラを出して生きたいにと思っています。

それではまた次の更新で。

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